2011 Fiscal Year Annual Research Report
社会行動を担う神経基盤の形成:幼若期オキシトシンの働き
Project/Area Number |
22659050
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
高柳 友紀 自治医科大学, 医学部, 講師 (10418890)
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Keywords | オキシトシン / 社会行動 / 情動行動 / ジフテリア毒素受容体 / トランスジェニックラット / 幼若期 |
Research Abstract |
幼若期の経験によって、成熟後の情動性と社会行動が大きく修飾されることが知られている。しかし、このメカニズムは明らかではない。本研究では幼若期に母から愛着行動を受けることにより仔のオキシトシン産生ニューロンが活性化され、その結果、仔の将来の情動行動や社会行動が規定されるという仮説の検証を目的とした。 ジフテリア毒素の投与によって時期あるいは部位特異的にオキシトシン産生ニューロンを破壊し、その行動に与える影響を検討するため、BACクローンのオキシトシン遺伝子座にヒトジフテリア毒素受容体(DTR)と蛍光蛋白質(YFP)を導入したトランスジェニックラットを作製した。7ラインを得て、それぞれに対してYFPとオキシトシンの二重免疫組織化学法を行い、6ラインにおいて分界条床核、視床下部室傍核、視索上核のオキシトシン産生ニューロンにYFPが共局在していることを確認した。よって、これらのラットではDTRがオキシトシン産生ニューロンに発現している可能性が強く示唆された。 また、我々は幼若期にオキシトシン系を活性化した時の影響を見るため、仔にオキシトシンを生後5日間投与し、成熟後の行動について網羅的な検討を行った。予想に反して、情動行動(オープンフィールドテスト、高架十字迷路テスト、明暗箱テスト)、社会行動(社会的相互作用テスト、社会認識テスト、チューブテスト)、うつ様行動(強制水泳テスト、尾懸垂テスト)について、幼若期にオキシトシンを投与することによる差は雌雄共に認められなかった。以前行った結果では、仔に対してアンタゴニストを投与すると成熟後の情動行動と社会行動が修飾されたが、それとは矛盾する結果となった。 今後は上記の新たなモデル動物を利用して、幼若期に内在性のオキシトシン系を抑制することの情動行動と社会行動への影響を検討し、これらの行動の発現に必要な神経基盤形成について明らかにする。
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