2011 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍内微小環境のモニタリングを目的とした新規糖ヌクレオチド解析法の確立
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22659067
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中嶋 和紀 独立行政法人理化学研究所, 糖鎖認識研究チーム, 基幹研究所研究員 (10442998)
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Keywords | 糖ヌクレオチド / 単糖代謝 / 糖鎖 / 質量分析 / クロマトグラフィー / 癌 / 栄養飢餓 |
Research Abstract |
本研究は糖鎖修飾の制御因子である糖ヌクレオチドを多面的に解析する方法を確立し、癌など糖代謝異常における生理的意義を明らかにすることを目的とする。昨年度はHPLCとLC-MSを用いて細胞内糖ヌクレオチドレベルと代謝経路を追跡する方法を確立した。本年度は^<13>C6-グルコースで標識した糖ヌクレオチドのMSスペクトルから単糖代謝の合成・分解を追跡する方法を検討した。具体的には、UDP-GlcNAcの質量同位体分布を継時的にモニターすることにより、ヘキソサミン経路、核酸合成経路、解糖系などの合成経路の流れを、またCMP-NeuAcの同位体からはUDP-GlcNAcの分解経路の流れを捉えることに成功した。 本法により昨年度見出した低グルコース・低酸素曝露による膵臓癌細胞株に特異的な糖ヌクレオチドの減少変化を追究したところ、その原因の一つとして、低酸素で核酸合成経路の流れが低下していることがわかった。また膵臓β細胞株インスリノーマを用いた解析から、膵臓β細胞ではUDP-GlcNAc分解経路すなわちCMP-NeuAc合成経路が極めて遅いことを見出した。 グルコース代謝と糖鎖生成との連携を明らかにするため、糖タンパク質のN型糖鎖および0型糖鎖を網羅的に解析できる方法を立ち上げ、低酸素曝露による細胞表面糖鎖の構造的変化を検討した。N型糖鎖の高分岐糖鎖とポリラクトサミン型糖鎖の発現量に違いを見出し、シアリルTn抗原などの0型糖鎖も低酸素で増加していることをが明らかにした。更にグルコース代謝と密接に関わるグルコース輸送体2の糖鎖変化を免疫沈降後、レクチンプロットにより解析し興味深い知見も得つつある。本研究結果からグルコース代謝から糖ヌクレオチド、糖鎖生成の連携を明らかにする糸口を得た。
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