2011 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞を用いた着床期特有の胎児エピゲノム環境感受性の解析
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22659070
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 憲子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (70280956)
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Keywords | エピゲノム / 環境感受性 / 子宮内環境 / 新生DNAメチル化 / 着床期 / DNA脱メチル化 |
Research Abstract |
望ましくない胎内環境で成育した胎児は、生後、時を経て青年期~中年期を迎える頃に肥満や代謝異常を主としたメタボリックシンドロームを呈する傾向がある。その病態メカニズムはまだ明らかではないが、発生の初期に核・クロマチン構造の変化及びエピゲノム状態の変化が胎内環境によって引き起こされ、その変化の影響は、個体が外的環境に曝露されながら時を重ねることによって現れてくるものではないかと考えられるようになってきた。胎児期のエピゲノム状態は特に着床期前後に大きく変動する。本研究では、着床直後の胚発生を模倣できるES細胞のin vitro分化系を用いて、培地に大豆成分ゲニステインを添加し、DNAメチル化状態にどのような変化が現れるか検討した。ゲニステインを用いた理由は、妊娠期の母親マウスの飼料にゲニステインを添加した場合に、仔マウスの特定の遺伝子領域のDNAメチル化状態が変化し、そのことが原因で毛色や肥満度などの表現型が変化することが報告されていたからである。本研究の結果、ゲニステインを添加した場合に、少なくとも74カ所のプロモーター領域のDNAメチル化状態が変化することがわかった。そのうちUcp1とSyt11の2つの遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態を継時的に解析した。両者のプロモーターの新生DNAメチル化過程は変化を受けなかったが、細胞分化に伴い脱メチル化される過程でゲニステインが存在するとDNAメチル化レベルが有意に低下した。DNAメチル化解析をbisulfite sequencing法、及び、5-hmc/5-mC解析法の両方で行った結果、ゲニステインによる脱メチル化促進は5-ヒドロキシメチル化シトシンの生成を介しているものではない事が示唆された。なお、内胚葉、中胚葉、外胚葉マーカーの発現を調べる限り、ゲニステインを添加しても分化の系統の方向性に差は生じていなかった。
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