2010 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞の内皮間葉移行による癌細胞の骨親和性獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
22659078
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 真寿美 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (30431307)
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Keywords | 骨転移 / 腫瘍微小環境 / 血管内皮細胞 / 腫瘍血管新生 |
Research Abstract |
近年増加傾向にある乳癌、前立腺癌、肺癌には、腫瘍発生後比較的早期から骨転移・骨浸潤が高頻度に出現する特徴がある。しかし、この原因は解剖学的位置関係だけでは説明困難であり、なぜこれらの癌が骨転移を起こしやすいのか未だ明らかではない。最近、腫瘍血管内皮細胞が内皮-間葉転換による脱分化の後、骨・軟骨細胞へ再分化して腫瘍組織の石灰化を誘導するという興味深い現象が報告された。これは、血管内皮細胞が作りだした骨類似環境によって、癌細胞が原発巣にいながらにしてすでに高骨親和性を獲得するようにプログラミングされる可能性を示唆している。当研究ではその可能性を検証するため、当該年度はまず、癌細胞と血管内皮細胞のどのような相互作用が腫瘍血管新生を惹起するのか、その詳細な分子メカニズムを解析した。臨床的に高頻度に骨転移を引き起こす滑膜肉腫では、腫瘍細胞がSrcファミリーキナーゼ(SFK)活性依存的に発現分泌するVEGFにより、血管内皮細胞が腫瘍組織へ積極的に導引されることが明らかとなった。SFK阻害剤をマウスの腹腔内へ投与した場合には、腫瘍血管新生が有意に抑制されると同時に、腫瘍の体積及び重量も著明に減少した。一方、高頻度に骨浸潤を引き起こす口腔癌では、癌細胞が分泌する破骨細胞分化因子RANKL依存的に血管内皮細胞が腫瘍組織へ導引されることが明らかとなった。このRANKLの発現はin vitro実験環境下では観察されず、in vivoマウス口腔環境下で初めて誘導されることから、癌細胞と周囲微小環境との相互作用がRANKLの誘導に重要であると示唆される。このように、腫瘍組織における腫瘍血管新生メカニズムは、癌細胞の種類によって異なることが明らかとなった。現在、これらの腫瘍組織から抗CD31抗体および抗ICAM1抗体と磁気ビーズを用いて血管内皮細胞の単離を行っており、今後これらの細胞の形質変化を解析する。
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Research Products
(7 results)