2011 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞の内皮間葉移行による癌細胞の骨親和性獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
22659078
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
津田 真寿美 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (30431307)
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Keywords | 骨転移 / 腫瘍微小環境 / 血管内皮細胞 / 腫瘍血管新生 |
Research Abstract |
近年増加傾向にある乳癌、前立腺癌、肺癌には、腫瘍発生後比較的早期から骨転移・骨浸潤が高頻度に出現する特徴がある。しかし、この原因は解剖学的位置関係だけでは説明困難であり、なぜこれらの癌が骨転移を起こしやすいのか未だ明らかではない。近年、腫瘍血管は、腫瘍細胞との直接接触や腫瘍細胞が分泌するサイトカインや増殖因子等によってその形質を大きく変化させ、正常血管とは異なる形質を獲得していることが明らかになっている。当該年度はまず、生体内腫瘍組織を模倣したin vitro3次元培義系を構築し、癌細胞と血管内皮細胞間で生じる相互作用を観察、その後どのような管腔構造変化が惹起されるかを解析した。具体的には、3次元マトリゲル上で血管内皮細胞HUVECsを管腔形成させた後、臨床的に高頻度に骨転移を引き起こすGFP標識滑膜肉腫細胞を播種し、タイムラプス蛍光顕微鏡を用いて血管内皮-腫瘍細胞間の相互作用を観察した。興味深いことに、滑膜肉腫細胞はHUVECsが形成する管腔内に積極的に浸潤する一方、HUVECsは間葉系細胞様へと形態変化を遂げマトリゲル上での運動能を亢進させ、結果としてHUVECsと腫瘍細胞が一体化した異常な管腔構造を形成した。Srcファミリーキナーゼ(SFK)阻害剤SU6656は、滑膜肉腫細胞やHUVECsのSrc活性を抑制すると同時に、腫瘍細胞からのVEGF産生を抑制し、HUVECsの間葉転換や腫瘍細胞を含んだ管腔形成を著しく抑制した。近年、骨に存在する破骨細胞においてもSrcが活性化状態にあることが報告されており、腫瘍細胞・血管内皮細胞・破骨細胞の恒常的なSrcの活性化によって生じる相互作用が、腫瘍の骨転移の成立に重要な役割を果たしていると示唆される。以上より、Srcは癌の骨転移・骨浸潤を抑制するための治療標的分子となり得ると期待される。
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Research Products
(15 results)