2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規滅菌装置の開発:窒素ガスプラズマの生体高分子、微生物由来毒素への効果
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22659085
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木藤 伸夫 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80161511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川村 久美子 名古屋大学, 医学部, 准教授 (30335054)
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Keywords | 滅菌 / 低温ガスプラズマ / エンドトキシン / リポ多糖体 / 窒素ラジカル / 高電圧パルス / 紫外線 |
Research Abstract |
初年度に滅菌に必要なプラズマの発生条件を検討し、耐熱性芽胞や栄養型菌が20~30分という短時間で殺菌できる条件を決定した。さらに、プラズマ照射によりプラスミドDNAが損傷を受けることも示した。本年度は、プラズマによるグラム陰性菌内毒素(エンドトキシン)の分解・不活化の確認に加え、プラズマによる殺菌メカニズム、プラズマ照射による変異誘発率などを検討した。Esherichia Coli ATCC25922株より熱フェノール法にて抽出・精製したエンドトキシンをガラスプレートに塗布・乾燥後、プラズマ照射を30分行った。処理後注射用蒸留水に溶出するエンドトキシン量を、エンドスペシー(生化学バイオビジネス)を用いて定量した。プラズマ照射によりガラスプレートから遊離するエンドトキシン量は、未処理プレートの0.8%に減少していた。対照実験のオートクレーブ処理では30%以上のエンドトキシンが遊離したことから、窒素ガスプラズマ照射によりエンドトキシンが低温で効率よく分解されることが示された。さらに、遊離したエンドトキシンの生理活性も低下していることを確認した。本年度の主要な目的であるプラズマの殺菌メカニズムについても検討した。窒素ガスをプラズマ源に用いた本法の殺菌メカニズムとして、高電圧パルス、窒素ラジカル、紫外線(UV)が協働的に作用することが提案されている。UVを透過しないフィルムで滅菌対象物を包装し、密封条件と袋の一部を開放した条件で殺菌効率を比較した。UVを透過しないフィルムで対象物を覆っても、袋の一部が開放されていれば殺菌は可能であった。逆に、UVを透過するフィルムで対象物を密封すると殺菌が起こらなかった。窒素ガスプラズマ中には殺菌効果を示す波長260nmのUVが生じないこと、プラズマ中のUV量は殺菌には不十分であることを確認し、先の結果と合わせ、本法ではUVが殺菌へ寄与しないと結論付けた。また、紙などの薄い絶縁体で対象物を密封した実験から、高電圧パルスの殺菌への寄与もほとんど無いと判断した。包装した対象物の滅菌には袋の一部が解放されていることが必須で、これらの結果から、プラズマ中を拡散する窒素ラジカルが殺菌効果を示す主要な因子であると推察した。なお、プラズマ照射により変異体が出現することは無かった。
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