2011 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性有機化合物を指標とした真菌感染症の早期診断法の開発
Project/Area Number |
22659086
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
岩口 伸一 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (40263420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 孝江 奈良女子大学, 理学部, 准教授 (80201606)
鈴木 孝仁 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60144135)
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Keywords | 感染症 / 菌類 / 微生物 / 病理学 / 揮発性有機化合物 / 動物真菌感染モデル |
Research Abstract |
真菌感染症は表在性と深在性の感染状態をとり、表在性真菌症では感染部位が限定され、診断・治療も比較的容易であり重篤に至ることも少ない。これに対し深在性真菌症では診断方法が限られている上に、早期に検出することは非常に困難であり、治療も難しい。特に、免疫力が著しく低下した患者において発症した場合には難治性となり、死亡率が高い疾患であるが、深在性真菌感染症を早期に診断できる有効な方法はほとんどないのが現状である。深在性真菌症の起因菌が宿主への感染過程、宿主応答に対して放出する微生物由来揮発性低分子化合物(MVOCs:Microbial Volatile Organic Compounds)を特定し、真菌感染症の早期診断、感染のモニタリングなどの指標としてMVOCsが有効であるかどうかについて、真菌感染動物の呼気に含まれるMVOCsの変化を捉える実験を計画した。 平成23年度は深在性真菌感染症(アスペルギルス症)の起因菌であるAspergillus fumigatus (A. fumigatus)について、真菌感染時に放出されるMVOCsの検出を動物感染実験モデル(マウス)を用いて行った。アスペルギルス症などの真菌感染症は宿主免疫力の一時的あるいは慢性的な低下により引き起こされるため、免疫抑制剤の投与により易感染状態にしたマウスに対する実験を想定して、動物感染実験モデルを確立した。免疫抑制剤を投与したマウスにA.fumigatus菌液を接種し、感染日から2日目のマウスの呼気を、固相マイクロ抽出法(SPME法)で3時間採取した。その後、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)によってVOCsを同定した。呼気採取したマウスについては、肺を摘出、逆培養し、菌が肺組織に存在することを確認し、さらに、肺の組織切片を作製、グロコット染色で菌糸を染めだすことにより、菌が肺の中に侵襲していたかどうかを確認した。GC/MSによって揮発性物質を同定した結果、感染しているマウスの呼気にはVOCs(IsothiocyanatocyclohexaneやPhenol、Decanal、分子量204の未同定の物質)が見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りカビを確実に感染させる方法を確立した。さらに、真菌感染マウスの呼気のみで検出されるVOCを同定した。今後はデータの再現性を確認する作業となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度の結果について再現性を確認すると共に異なるA.fumigatus菌株や異なる系統のマウスについて実験を行い、確認されたVOCsが感染の指標となるかについて詳細な検討を加える。さらに、他の深在真菌症の起因菌(Trichosporon属、Fusarium属、他のAspergillus属)についても同様な実験を行い、真菌感染においてVOCsにより種を同定できるかどうかについても検討を行う。また、検出されるVOCsが感染来のものなのか、真菌感染に対する宿主応答の結果によるものなのかについても検証する。
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