2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中発症後の遅延性神経細胞死を防ぐ画期的治療薬の研究
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22659109
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10093428)
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Keywords | 脳卒中 / 治療薬 / 神経ステロイド / 脳虚血 / 神経細胞死 / DHEA / progesterone |
Research Abstract |
脳卒中発症後の止血や血栓溶解が良好に経過しても、発症約2日後から進行する遅発性神経細胞死を防止する治療法はなく、重篤な後遺症の原因となっている。動物モデルを用いた我々のこれまでの研究で、虚血/再還流後48-72時間以内であれば、神経ステロイドであるDHEA、あるいはプロゲステロン(P4)の投与で遅発性神経細胞死を大幅に抑制できることが判明した。平成23年度では卒中発症長時間経過後でも神経細胞死の進行を防止できる新たな治療法の開発を目指して、治検移行のための基礎データを蓄積すると共に、これら薬物による神経保護作用の分子機構の解明を目的とし、以下のような結果を得た。 1)DHEAによるグルタミン酸輸送体(GLT-1)活性化の分子機構の解明 H22年度のラット脳スライス標本を用いた電気生理学的実験で、DHEAがアストロサイトのグルタミン酸輸送体GLT-1活性を上昇させて過剰なグルタミン酸を除去することを確認した。本年度は、この活性化が、GLT-1分子の感作ではなく、DHEAによるシグマ-1受容体の活性化を介したGLT-1発現量の増大によることを明らかにした。 2)プロゲステロン(P4)による虚血性神経細胞死保護作用の分子機構の解明 H22年度のラット大脳動脈閉塞(MCAO)法による一過性(60分)脳梗塞モデルを用いた行動学的、組織学的研究により、虚血開始後1-72時間におけるP4の腹腔二回注(4mg/kg/回、8時間間隔)で、神経細胞死と学習障害が大幅に改善することが確認された。本年度は、その分子機構を投与のタイミングごとに解析し、虚血開始1時間後の投与では、P4の代謝物アロプレグナノロン(ALLO)産生、24-48時間後投与では、P4受容体を介したERKとPI3Kの活性化、そして72時間後投与では、PI3Kの活性化が、神経保護作用の鍵機構であることが判明した。
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Research Products
(5 results)