Research Abstract |
EGFR遺伝子変異,EML4-ALK融合遺伝子,K-ras遺伝子変異は,非小細胞肺癌で認められる主要な遺伝子変異である.しかしながら,EGFR阻害剤,ALK阻害剤はそれぞれの遺伝子変異を有する肺癌に著効するにもかかわらず,K-ras阻害剤は無効であることが知られている.非小細胞肺癌の遺伝子変異の理解は単純ではない. (a) EGFR,EML4-ALK以外に,非小細胞肺癌において主要な役割を演じているチロシンキナーゼは存在するか.すなわち,その阻害剤が肺癌治療に有用であるようなチロシンキナーゼは存在する. (b) EGFR阻害剤,ALK阻害剤は対応する遺伝子変異を有する肺癌に有効なのに,K-ras阻害剤はなぜ無効なのか.EGFR遺伝子変異,EML4-ALK融合遺伝子とK-ras遺伝子変異は相互排他的に存在する.すなわち,一つの肺癌は3者のうち最大1つのみを有している.これは,3つの変異遺伝子が発癌において同様の役割を演じており,どれか1つで発癌に必要な条件を満たすことを示唆している.なぜ治療効果に相違があるのか (c) EGFR阻害剤,ALK阻害剤は全ての癌細胞を殺し切らず,一部の肺癌細胞は残存する.この現象は,同一性の強いと思われる細胞株において観察され,さらに臨床で分子治療薬の効果が不十分な大きな理由と考えられる.細胞死に陥る細胞と生存する細胞の違いは何なのか. 上記(a)(b)(c)の疑問に対する手がかりを掴み,新たな分子標的治療の標的分子を探るため,複数のEGFR変異細胞株,EML4-ALKを有する細胞株,K-ras遺伝子変異細胞株の遺伝子発現を,各遺伝子阻害前,各遺伝子阻害96時間目で比較検討している.EGFR,K-rasに関しては,MicroarrayにかけるべきmRNAの調整が終了した.今後EML4-ALKに関して調整を行う予定である.
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