2010 Fiscal Year Annual Research Report
プロリン異性化酵素による脂肪細胞の分化制御機構解明と抗肥満薬開発への応用
Project/Area Number |
22659175
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅野 知一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中津 祐介 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20452584)
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Keywords | プロリン異性化酵素 / 脂肪細胞 / メタボリックシンドローム / インスリン作用 |
Research Abstract |
我々はインスリシグナルにおいて中心的役割を果たしているIRS-1の結合蛋白を検索する過程で、代表的なプロリン異性化酵素であるPin1がIRS-1に結合することで、インスリンによるIRS-1のチロシンリン酸化からAkt活性化を顕著に亢進させることを見出した。さらに、Pin1の発現量が、高脂肪食を負荷したマウスの肝臓、筋肉、脂肪組織中で10倍近くも顕著に増加することを見出した。発現増加したPin1は、CREBのco-activatorであるCRTC familyにも結合し、CRTCを核内から細胞質へと移動させることで、CRE転写活性低下を導き、肝臓においては糖新生を抑制することを報告した。また、興味深いことに、Pin1を発現抑制あるいはPin1の活性阻害薬を用いると、脂肪細胞の分化が高度に抑制されることから、脂肪分化に必須であることも判明した。同様に、肝臓にPin1を過剰発現させると、肝臓に脂肪蓄積が促進されることから、肝においても脂肪蓄積に重要な働きをしている。さらに、Pin1 KOマウスでは、コリン・メチオニン欠乏食(MCD)による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症も強く抑制される(未発表データ)。現在まで、Pin1の発現量異常や遺伝子変異は、癌やアルツハイマー病、パーキンソン病などの発症に関与することが、Nature等の一流誌に報告されている。一方、これまで、Pin1が代謝調節に関係する報告はなく、我々が世界に先駆けて認識したことである。以上から、Pin1は、糖・脂質代謝シグナルへの調節作用に加え、マクロファージにおけるNF-KB活性化制御機序にも関係していると考えられ、Pin1を治療ターゲットとする新規治療の可能性が示唆された。
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