2011 Fiscal Year Annual Research Report
第3のコレステロールセンサーとしてのSIKの機能解明と応用
Project/Area Number |
22659176
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
竹森 洋 独立行政法人医薬基盤研究所, 創薬基盤研究部, プロジェクトリーダー (90273672)
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Keywords | 肝 / 転写因子 / CREB / SIK / 脳 / 生体エネルギー / コレステロール |
Research Abstract |
生体に取り込まれたコレステロールの代謝調節において、コレステロールが過剰な場合は、核内受容体のLXRが代謝物を感知しコレステロールの排出経路を活性化させ、反対に少ない場合は、SREBPが活性化されコレステロールの生合成経路が活性化される。一方、生体エネルギーはコレステロールのみでは無く、コレステロールと中性脂質の複数のエネルギー源が過剰な状態や、コレステロールと炭水化物が過剰という複雑な状況が想定される。複数経路の過剰状態では、生体はエネルギー排出・浪費に働くか蓄積に働く必要があり、栄養素を個別に制御するシステムと全体をまとめて制御するシステムの双方が機能する必要がある。塩誘導性キナーゼ3(SIK3)の遺伝子破壊マウス(KO)を解析することで、コレステロールを中心とした生体エネルギー代謝の複雑な制御を解明し、生活習慣病を中心とする創薬に貢献する。昨年度までの解析から、SIK3-KOマウスは肝機能が低下しており、SIK3-KOマウスにコレステロールと脂肪の2種が多い食事を負荷すると、極度の肝障害が誘導され肝臓内に無数の管様構造が構築された。一方、SIK3-KOマウスにコレステロールのみが多い食事を負荷すると、肝臓にコレステロールの固まりが沈着し肝臓外および体外に排出されなかった。また、脂肪のみが多い食事は肝障害を低減させた。すなわち、コレステロールと中性脂肪の代謝はセットで調節されており、そのバランスをSIK3が制御している。SIK3が欠損した場合は、新規の脂肪合成が低下しているため、外から脂肪を供給すると肝機能が改善されるが、その際にコレステロール代謝が異常(過剰量の負荷)を伴うと、中性脂肪負荷が逆に作用し、肝機能をさらに増悪させるということが判明した。肝機能の悪化は、コレステロールから合成される胆汁酸の排出不全が原因であると考えられるが、SIK3-KOマウスでは胆汁酸の合成・排出制御が、食事に反応していないことも明らかとなった。例えば、胆汁酸は脂肪吸収に必要であるた、高脂肪食負荷時は必要以上の胆汁酸供給は不要となり、胆汁酸の合成が抑制されるが、SIK3-KOマウスではその抑制は観察されない。インスリンが栄養の蓄積・代謝制御の中心分子であるが、SIK3はインスリンと平行して機能するシグナルであり、栄養素間の分配に特に重要であると示唆された。SIK3が無いと、栄養蓄積反応が低下し、結果として痩せ・インスリン高感受性である。インスリン反応性に着目してSIK3阻害剤のスクリーニングを行い、1型糖尿病に有効な低分子の獲得に成功した。現在までに、コレステロール代謝異常は観察されないことから、インスリン反応性とコレステロール反応性は、SIK3の機能の閾値が異なるか、臓器・細胞ごとでの役割の違いも想定される。今後は、SIK3の機能を細胞・臓器ごとに解析を進め、より詳細に解明する必要がある。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Novel repressor regulates insulin sensitivity through interaction with Foxol2012
Author(s)
Nakae J, Cao Y, Hakuno F, Takemori H, Kawano Y, Sekioka R, Abe T, Kiyonari H, Tanaka T, Sakai J, Takahashi SI, Itoh H
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Journal Title
EMBO J
Volume: 31
Pages: 2275-2295
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Involvement of SIK3 in glucose and lipid homeostasis in mice2012
Author(s)
Uebi T, Itoh Y, Hatano O, Kumagai A, Sanosaka M, Sasaki T, Sasagawa S, Doi J, Tatsumi K, Mitamura K, Morii M, Aozasa K, Kawamura T, Okumura M, Nakae J, Takikawa H, Fukusato T, Koura M, Nish M, Hamsten A, Silveiral A, Bertorellol AM, Kitagawa K, Nagaoka Y, Kawahara H, Tomonaga T, Naka T, Ikegawa S, Tsumaki N, Matsuda J, Takemori H
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: e7(in press)
DOI
Peer Reviewed
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