2010 Fiscal Year Annual Research Report
化学療法誘起神経障害に対する末梢神経隣接組織に注目した新規治療法の開発
Project/Area Number |
22659285
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
川股 知之 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80336388)
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Keywords | パクリタキセル / 疼痛 / 後根神経節 / 脊髄 |
Research Abstract |
平成22年度は,1. パクリタキセル誘起末梢神経障害モデルラットの確立,2. 神経障害性疼痛語よび神経伝達速度の測定・評価,3. 神経組織でのL-serine測定,を行った. 1. パクリタキセル誘起末梢神経障害モデルラットの確立 Bennettらの方法(Polomano et al. Pain 2001)に従い,雄性SDラット(5週齢)にパクリタキセル2mg/kgを隔日で4回腹腔内投与した.対照動物ではパクリタキセルの溶媒(クレモフォアー)のみ投与した.経時的に体重測定を行い,モデル動物と対照動物で体重減少がないことを確認した. 2. 神経障害性疼痛および神経伝達速度の測定・評価 神経障害性疼痛は足底皮膚での,機械刺激(Von Frey filament)に対する逃避閾値,熱刺激・冷刺激(アセトン)に対する逃避潜時を測定した.その結果,パクリタキセル投与終了22~36日後に機械性痛覚過敏,冷刺激過敏行動を示したが,熱性痛覚過敏は示さなかった.また,尾神経の伝導速度の低下を示した.これらの機能異常は投与終了43日後には回復した. 3. L-serine測定 高速液体クロマトグラフィー法を用いて神経組織のL-serineとD-serineを分離測定した.脊髄,坐骨神経では経過を通してL-serine濃度に変化なかったが,後根神経節ではパクリタキセル投与終了15~22日後にL-serine濃度の低下を認めた. 以上により,本年度ではパクリタキセル誘起末梢神経障害モデルをが確立するとともに,疼痛・神経伝達速度をマーカーに神経障害を評価しえた.今後,神経障害とL-serineの関係を明らかにする予定である.
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