2011 Fiscal Year Annual Research Report
化学療法誘起神経障害に対する末梢神経隣接組織に注目した新規治療法の開発
Project/Area Number |
22659285
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川股 知之 信州大学, 医学部, 准教授 (80336388)
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Keywords | パクリタキセル / 後根神経節 / 外套細胞 |
Research Abstract |
「化学療法に伴う末梢神経障害」は治療継続の規定因子の一つであり,患者の予後に関わる重大な副作用である.しかしながら,現在のところ有効な治療法はない.そこで「化学療法に伴う末梢神経障害」の機序を分子レベルで解明し,それに基づく有効な治療法の確立を研究目的として研究を行った.Bennettらの方法(Polomano et al.Pain 2001)に従い,雄性SDラット(5週齢)にパクリタキセル2mg/kgを隔日で4回腹腔内投与し,パクリタキセル慢性投与末梢神経障害モデルを作成した.対照動物ではパクリタキセルの溶媒(クレモフォアー)の投与の行なった.モデル動物では,パクリタキセル投与終了22~36日後に機械性痛覚過敏,冷刺激過敏行動,さらに,尾神経の伝導速度の延長を示した.また,後根神経節でのL-seine合成酵素3PGDH発現低下とL-serine濃度の低下を認めた.3PGDHは後根神経節では神経細胞には発現しておらず,サテライト細胞に特異的に発現していたことから,神経細胞は自らL-serineを産生することができず,サテライト細胞からL-serineの供給を受けていることが示唆された.そこで,モデル動物にパクリタキセル初回投与時から28日間L-serineを連日投与したところ,機械性痛覚過敏,冷刺激過敏行動が改善するとともに,延長した尾神経の伝導速度が正常化した.正常動物へのL-serine投与は機械刺激逃避閾値や尾神経の伝導速度に影響を及ぼさなかった.以上の結果より,パクリタキセル慢性投与により後根神経節サテライト細胞での3PGDH発現が低下し,サテライト細胞から神経細胞へのL-serine供給が低下するために末梢神経障害が生じることが明らかとなった.
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