2011 Fiscal Year Annual Research Report
虚血機序に基づく内耳障害の治療戦略―ナノカプセル型人工酸素運搬体の検討
Project/Area Number |
22659308
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
暁 清文 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00108383)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽藤 直人 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (60284410)
白馬 伸洋 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70304623)
|
Keywords | h-LEH / 1-LEH / 人工赤血球 / 一過性内耳虚血 / 突発性難聴 / ABR / 内有毛細胞 / 外有毛細胞 |
Research Abstract |
突発性難聴の治療として古くより高気圧酸素療法が行われてきたが、効果は認められるものの大規模な装置と人手を要するため、次第に行われなくなってきている。本邦で開発されたナノカプセル型人工酸素運搬体であるLEH (liposome enveloped hemoglobin)はヘモグロビンをリポゾーム膜内に封入したもので、直径約0.2μmと微細な顆粒状に精製されており、赤血球(直径約7pm)が到達できない末梢にまで酸素が供給できることから、高気圧酸素療法以上の効果が期待できる。今回の研究では、一過性内耳虚血の動物モデルを用いてLEHによる内耳障害防御効果を検討した。 実験動物にはスナネズミを使用した。虚血/再還流の負荷後、直ちに、(1)高酸素親和性LEH(h-LEH),(2)低酸素親和性LEH(l-LEH),(3)洗浄同種赤血球(Washed RBC),(4)生理食塩水(vehicle)のいずれかを2ml/kg、静注した。一週後にABRを測定、その後、堵殺して蝸牛を摘出、標本を作製した。 その結果、虚血前のABR閾値を0dBとすると、一週後の難聴のレベルは(4)>(3)>(2)>(1)の順で大きく、具体的には最も障害がでやすい32kHzでのABR閾値は、生理食塩水で34.2±7.4dB、赤血球で26.7±8.2dB、l-LEHで16.0±7.6dB、h-LEHで8.0±8.2dBであった(各群ともn=6)。また組織学的にも内有毛細胞の脱落割合は(4)<(3)<(2)<(1)の順で少なく、h-LEHやl-LEHを投与した動物では内耳障害が有意に防御された。以上の結果から、高酸素親和性LEHは突発性難聴の有望な治療薬となりうると結論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は初年度は虚血前投与を検討したが、二年目の今年は虚血後投与を行って効果を検討した。その結果、虚血前投与の方は効果が高かったが、臨床的には虚血後投与の効果の方が重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度はこれまでの研究結果を踏まえ、虚血後投与の時期を、虚血直後だけでなく、虚血1日後、三日後、7日後と広げ、この治療のtherapeutic time windowを検討する予定である。
|