2011 Fiscal Year Annual Research Report
メンブレントラフィックから見た歯周病の早産誘発機構の分子基盤研究
Project/Area Number |
22659378
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
天野 敦雄 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50193024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 裕明 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (70359850)
古田 信道 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (50452446)
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Keywords | 歯学 / 細菌 / 感染症 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 歯周病菌 / トロフォブラスト / 早産 |
Research Abstract |
歯周病は早産・低体重出生児の危険因子であると考えられており、動物実験により歯周病菌 Porphyromonas gingivalisの血行性感染が原因の1つと考えられている。しかしながら、その発症機序は不明であった。昨年度、我々は、P. gingivalisに侵入されたトロホブラスト細胞では細胞周期G1アレストやDNA傷害が誘発されることを見出した。またATR-Chk2-p53-Fas経路やRas-Ets1-ERK1/2経路も活性化されることを見出し、P. gingivalis感染によるトロホブラスト細胞への影響の一端を明らかとした。 本年度は、P. gingivalis線毛遺伝子型の代表菌株、線毛遺伝子入替え株、ジンジパイン欠損株、線毛遺伝子欠損株および線毛保有ジンジパイン欠損株を用い、胎盤栄養膜細胞(トロホブラスト細胞)のアポトーシス誘導機序について検討を加えた。P. gingivalisの侵入によってATR-Chk2経路とRas-ERK1/2-Ets1経路の活性化がみられた。この活性化にはジンジパインの関与は認められなかった。一方、プロテアーゼ欠損株の侵入ではp53の蓄積は見られなかった。これら知見より、細胞侵入を果たしたP. gingivalisはジンジパインによりMDM2を特異的に分解し、トロホブラスト細胞の細胞周期G1アレストならびにアポトーシスを誘導することが示唆された。一方、線毛保有ジンジパイン欠損株の細胞侵入はp53の蓄積を誘導しないが、p21の活性化を促進した。これらの知見から、ジンジパインはp53依存性にp21を活性化することによりアポトーシスを誘導する一方、線毛はp53非依存性にp21を活性化し、ネクローシスを誘導する可能性が示された。
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