2010 Fiscal Year Annual Research Report
臓器移植を受ける患者及び家族に対する倫理的関わりモデルの開発
Project/Area Number |
22659405
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
林 優子 大阪医科大学, 看護学部, 教授 (50284120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志自岐 康子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60259140)
習田 明裕 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (60315760)
赤澤 千春 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70324689)
太田 名美 大阪医科大学, 看護学部, 助教 (50585495)
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Keywords | 臓器移植医療 / 看護師の倫理的苦悩 / 質的統合法(KJ法) |
Research Abstract |
臓器移植医療に携わる看護者は、治療の選択の有無が患者の生死を左右すること、ドナーがいなければ治療は成立しないこと、人々の価値観の多様化などが相まって、さまざまな倫理的場面に直面することが多い。本研究は、臓器移植看護の場面において、看護者がどのような倫理的状況に苦悩し、対応しているのかを明らかにした上で臓器移植を受ける患者および家族に対する倫理的関わりモデルを開発することを目的としている。本年度は、特に腎移植医療にかかわった看護者を対象にし、看護者がどのような倫理的状況に苦悩しているかを明らかにすることである。本研究を実施するにあたり本学の倫理委員会で承認を得た。腎移植看護の経験を持つ看護者に研究の趣旨を説明し、同意を得た上で、移植前や移植後の看護場面で困ったり、迷ったりした出来事やその時の思いについて語ってもらい、ICレコーダーに録音した。録音した面接内容を逐語録にして整理をし、山浦晴男氏の質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った。分析の結果、レシピエントやドナーや家族とのかかわりにおいて倫理的判断に苦悩する看護師の姿が明らかになった。それらは以下の通りである。(1)移植医療システムの不十分さがもたらす困難感、(2)再移植に躊躇する看護師としての迷い、(3)ギクシャクした雰囲気がもたらす閉口感、(4)正しい情報が社会に伝わっていない現実のありようからくる無力感,(5)形成された関係性から生じる葛藤、(6)レシピエントと看護師との認識のずれからくる苛立ちであった。これらの看護師の苦悩は、レシピエントや生体ドナー、医療者との間で、看護師としての職業倫理や自己の価値観との相違を感じた時に、迷い、悩み、困惑、苛立ち、釈然としない割り切れなさがわき起こり、倫理的判断に苦悩する自分自身を感じ一人で悩んでいた。
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