Research Abstract |
本研究と併行して進行している,タイのHealthy Tambon Project(タイ・地域健康増進事業)およびその評価事業であるTCNAP(タイコミュニティーネットワーク評価事業)への関与を通じて,タイ東北部における地域保健活動の実態について情報を収集した。ただし,これらプロジェクトは,狭義の地域保健に留まらず,安全な生活,環境の保護保全,地場産業の育成,さまざまなボランティア活動の推進など,住民の生活全般を包含するものであり,本研究ではその中の保健師による地域保健活動に焦点を絞って,情報を収集した。それらの結果を参考に,上級実践看護師APNおよびNPとして活動を行っている300名の保健師を対象として,住民の人口統計学的データや健康情報などの収集と活用の実態について,郵送法による質問紙調査を実施した。139件(46%)の回答を得た。調査に当たっては,所属施設の倫理審査を経た後に,タイ看護協会による倫理審査の承認を得て実施した。 住民からの情報収集については,80%以上の保健師が,住民の症状,既往歴,現在の治療状況,健康状態,感染の有無,主なケア提供者などの看護関連情報を収集する一方で,ADL,住居の衛生状態,病院までの移動手段などについては、60~80%の保健師しか収集していないことが示された。 これらの情報の活用について,役所などの管理部門への報告の有無を指標として尋ねたところ,病名や現在の治療状況についてもそれぞれ14%,17%の保健師は報告をしておらず,報告率が60~70%の項目がほとんどであった。すなわち,日常的な地域保健活動を通じて,多くの情報を収集している一方で,充分に活用していない情報が多くあることが示唆された。もちろん,各保健師が担当する住民のフォローアップなどに活用している情報もあると考えられるが,収集した情報の体系的なデータ処理が充分にはできていないことが本調査により明らかになった。
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