2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22680022
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野口 泰基 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 講師 (90546582)
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Keywords | 認知科学 / 視覚認識 |
Research Abstract |
交付申請書「研究実施計画」記載の通り、計画2年目にあたる今年度は、意識化される情報(視覚刺激)の内容を高度化・複雑化させるアプローチを行った。 1年目に行った実験により、視覚情報が脳内で無意識状態から意識状態に移行する際の基本的な流れは「腹側系高次視覚野→一次視覚野(V1)→全脳(頭頂葉・前頭葉を含む)」という順番であることが示された。だがこの実験において用いた刺激はガボールパッチと呼ばれる白黒の縞模様であり、様々な視覚刺激の中でも最も単純なものの1つとされている。日常生活で目にするような複雑な刺激(様々な色や形をした物体・多くのヒトの顔など)を意識化する際でも、単純な刺激を用いた時と同様の脳内処理が見られるかは検討の余地がある。 そこで計画2年目にあたる今年度は、意識化される刺激を高度化・複雑化させ、それらの情報が無意識状態から意識状態に移行する際の脳活動を計測することを目的とした。まず前段階として、それら高次な視覚情報(ヒトの顔など)が無意識状態において脳内でどのように表現(エンコード)されているかを、主に脳波計測を行うことによって調べた(学会発表2・4・5件目)。その結果、顔や視線といった高次な視覚刺激は、ガボールパッチのような単純な視覚刺激と異なり、無意識状態でもその情報の多く(顔の向きの上下・視線の左右や移動方向など)が脳活動に影響を与えていることが示された。これらは無意識知覚における高次な情報処理能力を示す結果であり、無意識処理と意識処理の境界線を規定する上での重要な知見であると考えられる。これらの成果は論文として専門誌に投稿し、現在査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「無意識的な神経活動が、意識的な表象に変化する瞬間の脳活動を記録・観察する」という目標の基本的な部分は既に達成しているため。この知見があらゆる表象に一般化できるかを調べるのが今後の主な課題であり、おおむね予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」でも記したとおり、視覚表象の意識化における脳内情報処理の流れは特定しつつある。だが、それらの部位で視覚情報に対するどのような神経処理が行われているか、その具体的な内容(処理様式)に関しては未だ不明な点が多い。今後は1つの視覚刺激が持つ輝度・色・位置など種々の情報に注目し、神経回路の中でそれらの情報がどのように処理・統合・表現されるのか、という点にもアプローチしたい。つまり無意識・意識処理の場所や流れだけではなく、処理様式(メカニズム)にも踏み込む方向性で研究を推進する。
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