2010 Fiscal Year Annual Research Report
複数のモジュールで構成されるシグナル伝達経路の適応性、振動性及び周波数特性の解析
Project/Area Number |
22680024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤井 哲 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20500367)
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Keywords | 振動 / 適応 / 粘菌 / モジュール / シグナル伝達 / ネットワーク / ライブセルイメージング / 自己組織化 |
Research Abstract |
粘菌細胞が互いに集合する際に用いる誘因物質サイクリックAMP(cAMP)は、細胞外cAMPの刺激によって細胞内で新たに生成され、放出される。この応答が細胞間でそろい、振動と波となって伝播し、細胞が移動する向きをガイドしている。これについて、本年度までに得られた知見について、年度の始めに論文として報告した。本研究期間では、この振動と波が、広い範囲の条件下で頑健に形成される仕組みの解明をすすめた。応答は一過的で、刺激が持続すると刺激前の状態に戻る、いわゆる「適応」という細胞応答に広く認められる特性を示す。この応答の適応からの回復、「脱適応」の時間依存性、濃度依存性、生きた細胞の細胞内のcAMPを可視化することで定量的に特徴付けた。その結果、脱適応には5から6分という一定の時間が必要であることが定量的に明らかにすることに成功し、加えてこのことが、5-6分の振動性を生み出す根源的な性質であることを示すことができた。さらに、この応答が刺激の濃度差を検出していることについても、定量的な測定をおこない、具体的な特性を明らかにした。以上の性質を実現するシグナル伝達経路のモジュールについても解析を進め、cAMP生成を担う酵素であるアデニール酸シクラーゼの活性化に必須の、PHドメインタンパクCRACの膜への局在化について、cAMPと同時に可視化することで応答の測定をおこなった。その結果、応答の立ち上がりについて、両者に強い相関がみられることを明らかにした。またCRACは自己組織的な波パターンとして局在し、今回、その幾何学的な特徴と周波数特性を明らかにした。適応性、興奮性、振動性をうみだすモジュールがどこにどんな構造であるかに関して、これまでに報告されているネットワークの知見を踏まえ、特に相対的な濃度差の検出を可能にする構造について理論的な検討を進めた。
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