2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分子電解質水和水のダイナミクス精密解析に基づくバイオマテリアルの創製
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22680039
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森本 展行 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (00313263)
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Keywords | 高分子構造・物性 / 生体材料 / 水和 / バイオテクノロジー |
Research Abstract |
本研究では、電解質高分子水溶液中の高分子鎖近傍における水の動的平衡状態を詳細に調べ、バイオマテリアル設計に展開することを目的としている。前年度の成果で誘電緩和分光測定および成分抽出解析法を用いて、核酸を含むアニオン性電解質ポリマー近傍でバルク水よりも回転運動性の増加した水(HMW)の存在を確認している。本年度は、核酸キャリアのベースポリマーとして多くの研究がなされているカチオン性高分子、ポリ(L-リジン)(PLL)、ポリエチレンイミン(PEI)、およびポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーについて、その動的水和構造を検討した。pHが生体に近い7.5のとき、PLLとPEIでは拘束水に加えてHMWがポリマー近傍に存在することを確認した。一方でPAMAMデンドリマーでは、拘束水のみが確認されたが、その緩和強度より通常のポリマーに比して多くの水分子からなる拘束水層の存在を見いだした。次にpHの低いエンドソーム内でのpH低下を想定したpH4.0における測定では、PLLやPAMAMデンドリマーはpH7.5の場合と水和構造に特別な変化はない。一方でPEIでは水和層の拡大とHMWの増加がみられた。これはPEI鎖の二級および三級アミンも荷電し、かつ分岐鎖の運動性の制限もPAMAMデンドリマーより少ないためと考えられた。さらにPAMAMデンドリマーの形成する水和層の世代数(G)依存性を評価した。その結果、G0からG2までは回転運動性の高い水が存在するが、世代数の増加により消失することが確認された。以上より荷電密度に加え、ポリマー鎖の運動性もHMWの形成に影響することが示唆された。今後、動的平衡状態での水和構造と機能との相関を詳細に検討することで、バイオマテリアル設計の新機軸になりえると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災により研究を遂行していた建物が甚大な被害を受け、被災建物への立ち入りが禁止され装置類の取り出し・設置・再稼働、あるいはこれにかかる多大な業務に時間を要したため。また精密装置の調整にも労を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの結果を踏まえて、電解質ポリマーの水和評価を行うと共にバイオ機能との相関性について検討し、新規ポリマーを設計・調製し評価する。ただ上記の理由により、今後2年間のプレハブへの避難を引き続き余儀なくされている。一次避難先での実験設備、装置の設置のための空間確保がままならない。このため、細胞相互作用に関する実験系の規模をやや縮小し、そのぶん新規ポリマーの設計に注力することも念頭においている。
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Research Products
(6 results)