2011 Fiscal Year Annual Research Report
“スマート"ナノファイバーを用いた多能性幹細胞の胚様体作製と分化誘導制御
Project/Area Number |
22680042
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
荏原 充宏 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (10452393)
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Keywords | ナノ材料 / 細胞・組織 / 再生医学 / 生体材料 |
Research Abstract |
本研究では、外部刺激に応答してその構造を変化させる"スマート"高分子を用いて、配向性を有するマカロニ型"スマート"ナノファイバーネットを作製し、そのユニークな伸縮変化を利用した細胞のトラップと分化誘導因子の放出を同時に行うことで、多能性幹細胞の胚様体の作製と分化誘導を簡便かつ効率的に行う新規培養システムの開発を目指す。平成22年度までに合成したN-イソプロピルアクリルアミド(以下NIPAAmと略す)と官能基を有する2-カルボキシイソプロピルアクリルアミド(以下CIPAAmと略す)の共重合体を用いて、電解紡糸法によってナノファイバーメッシュを作製した。この際、CIPAAmのカルボキシル基を介して光架橋をするベンゾフェノン(BP)を導入することで、ナノファイバーメッシュを光架橋をすることに成功した。平成23年度にはこのナノファイバーメッシュを用いて細胞の補足・放出効率を定量的に評価した。具体的には細胞をこのナノファイバーメッシュ上に播種し、温度を上昇させることで細胞をメッシュ内にトラップした。この際、ナノファイバーの径が機械的強度、収縮速度、細胞の補足効率などに与える影響を調べた。またナノファイバーの温度に応答したサイズ変化に関しては、原子間力顕微鏡(AFM)(現有)を用いて調べた。また、温度変化を繰り返すことで、メッシュからの細胞の放出にも成功した。通常、細胞をゲル内に封入する際、有毒なゲル化剤などの使用が懸念されるが、本提案メッシュを用いることで、細胞をメッシュ内に低侵襲に封入できるのみならず、外部刺激で放出させることも可能なため、様々な細胞マニピュレーションのツールとしての可能性が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光架橋可能な温度応答性ナノファイバーメッシュの作製と、それを用いた細胞の可逆的なトラップ・放出に関しては予定通り進行している。一方で、ナノファイバーメッシュが不透明なため、位相差顕微鏡での細胞の経時的な観察が困難なため、細胞の機能発現評価に関しては24年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
導入したCIPAAmの側鎖のカルボキシル基を用いることで細胞接着因子や細胞増殖因子などをファイバーに導入し、細胞接着や増殖に及ぼす影響について詳細に調べる。温度変化を繰り返すことでナノファイバーメッシュを繰り返し収縮させ、補足した細胞に物理的刺激を与える。この物理刺激と生化学刺激とを組み合わせることで、幹細胞がどのように機能変化するかについて詳細にまとめる。最後に補足した細胞がメッシュ内でその細胞機能を維持できるかについて調べ、このスマートナノファイバーメッシュの新しい細胞培養機材として可能性を評価する。
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