2012 Fiscal Year Annual Research Report
グライコプロテオーム解析技術を用いた肺癌糖鎖標的腫瘍マーカーの網羅的同定
Project/Area Number |
22680064
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
植田 幸嗣 独立行政法人理化学研究所, バイオマーカー探索・開発チーム, 上級研究員 (10509110)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 肺癌 / 糖鎖 / プロテオミクス / レクチン / バイオマーカー / 血清 / 診断 |
Research Abstract |
前年度までに、独自に開発した網羅的糖鎖変動定量分析技術IGEL法(Mol Cell Proteomics, 2010 (9) 1819)、及び96連IGEL精製ロボットを使用し、144症例の血清(健常者血清39例、良性肺疾患29例(COPD6例、間質性肺炎23例)、肺腺癌Stage I-IV 49例、肺扁平上皮癌Stage I-IV 27例)から得られた糖ペプチド精製物の質量分析を完了した。また、二段階からなる統計解析手法により、肺腺癌早期診断マーカー候補9種類、肺扁平上皮癌早期診断マーカー候補7種類の糖タンパク質を決定した。本年度はCy3標識レクチン(ConA、SSA、LCA)と各種バイオマーカー候補糖タンパク質特異抗体、そしてLuminexテクノロジーを組み合わせた高速定量イムノアッセイシステムの構築を試みたが、標的とする計16種類の血清糖タンパク質に対する十分な特異性、親和性を持つ抗体を入手することが現行の抗体作成技術では極めて困難であることが分かった。こうした技術上のリスクは事前に予測されていたため、同時並行で開発を行ってきた独自の糖鎖構造高速定量質量分析技術Energy Resolved Oxonium Ion Monitoring Technology (Erexim法) (Anal Chem, 2012 (84) 9655)をバイオマーカーの大規模検証試験に導入した。本技術は分析対象とする糖ペプチドのアミノ酸配列情報さえあれば、特定の糖鎖付加部位に結合した糖鎖バリエーションを50種類まで10分間で一斉定量可能である。さらに、数百症例の検証試験のための血清前処理条件の至適化も行い、全行程を96ウェルフィルタプレート上で処理できるように工夫も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺癌糖鎖標的バイオマーカー検証試験方法の第一候補として予定していたイムノアッセイについては、全候補タンパク質に対する特異抗体作成の困難性が判明したため回避することとしたが、当初予定で計画していた第二の新規分析法開発が予想以上に順調に進み、知財化、論文化まで行うことが出来た。この成果により、さらに新規性、スループットの高い糖鎖標的腫瘍マーカー検証試験が可能となったため、当初予定と比して予定通りの深達度であると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度開発を行った糖鎖構造高速定量質量分析技術Energy Resolved Oxonium Ion Monitoring Technology (Erexim法)を用いた肺癌糖鎖標的バイオマーカー候補の大規模検証試験を行う。 具体的にはトリプシン消化を行った血清サンプルをトリプル四重極型質量分析装置にて分析する。ここで、すでに同定済みの16種糖タンパク質バイオマーカー候補分子特異的な質量チャネルを設定し、同タンパク質群に付加された糖鎖構造とその存在比率を糖鎖由来フラグメントイオン(オキソニウムイオン)から決定する。 最終的には判別分析や回帰分析を応用したマルチバイオマーカー診断モデルを構築し、最も感度、特異度が高く早期肺癌が診断可能なシステムの完成を目指す。
|
Research Products
(16 results)