2010 Fiscal Year Annual Research Report
癌におけるマイクロRNAの特性を利用した癌特異的ウイルス療法開発の新戦略
Project/Area Number |
22680065
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 貴史 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (70432911)
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Keywords | 癌 / ウイルス療法 / バイオテクノロジー / 遺伝子治療 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
腫瘍溶解性ウイルス療法(Oncolytic Virotherapy)は、ウイルスが本来持っている癌細胞に感染後、癌組織内で増殖しながら死滅させるという性質を利用する方法である。本研究では、4半世紀前に製造承認を得た純国産ワクシニアウイルスLC16m8ワクチン株の独自性と安全性に注目し、遺伝子組換え技術によりさらなる改良を加え、他に類のない新規癌標的治療法として活用する。癌におけるマイクロRNA(miRNA)の特性を利用して、ヒト及びマウス正常組織と比べ肺癌、及び膵臓癌などで発現が低下しているmiRNAのlet7aに注目し、その標的配列をウイルス拡散や病原性に関わるB5R遺伝子の3'UTRに挿入することによってmiRNA制御型ワクシニアウイルスを作出した。let7a低発現細胞であるヒトA549肺癌細胞、BxPC-3膵臓癌細胞を免疫不全ヌードマウスの右腹側の皮下に移植し、その腫瘍直径が約6mmに到達した時、10^7pfuのウイルスを腫瘍内に投与した。let7a制御増殖型ワクシニアウイルスは、腫瘍特異的に増殖し、正常組織へのウイルス拡散・病原性は見られなかった。それに対し、LC16m8の親株でB5Rを恒常的に発現するウイルス、及びlet7aの標的配列に変異をもつウイルスは強力な抗癌作用を示したが、ウイルスは正常組織へ拡散し、最終的には全てのマウスがウイルス毒性によって死亡した。以上の結果より、miRNA制御ワクシニアウイルスは、癌細胞ではB5Rを発現するが、正常細胞ではB5Rを発現しないため、強力な腫瘍溶解性による抗腫瘍効果と高い安全性を兼ね備えたウイルスであることを実証した。さらに、癌の多様性に対応するため、let7aに換えて、正常組織と比べ多種の癌細胞で発現が低下しているmiR-15、-16、-143、-145の標的配列をB5R遺伝子の3'UTRに挿入した組換えウイルスを作出した。様々な種類の癌細胞株に各制御ウイルスを感染させ解析した結果、各miRNA制御増殖型ワクシニアウイルスのB5R発現と拡散・増殖性は、let7a制御ウイルスと同様に、各細胞でのmiRNA発現パターンに依存していることを確認した。
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Research Products
(11 results)