2011 Fiscal Year Annual Research Report
氾濫原マネジメントの高度化に向けた河川地形環境の動態観測と予測法の構築
Project/Area Number |
22681026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東 良慶 京都大学, 防災研究所, 助教 (50464201)
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Keywords | 河岸侵食 / 河川地形環境 / 河道地形変化 / 氾濫原マネジメント / 水害地形環境 / 侵食崖 / 堆積環境 / 宇治川 |
Research Abstract |
わが国の沖積河川においては,森林保全の進展および治水施設の設置等により上流からの堆積物供給は期待できず,河道内での河岸侵食が土砂供給および河川地形変化の本質となっている.国外の大陸河川流域においては,氾濫原に宅地や田畑等が密集しており,社会基盤が河岸侵食を受けるリスクが高い.このように世界的にも現地に適用可能な河川地形環境の高精度予測手法が求められている.本研究では上述に鑑み,主に洪水イベント時に発生する側岸侵食過程の物理的動態を河川水文・地盤環境諸量の連続観測を通じて解明し,これらの観測結果にもとづき,河川環境保全および氾濫原の計画的土地利用に資する河川地形環境の評価・予測手法を構築する.平成22年度は現地観測プラットフォーム設置位置を選定,ボーリングによるオールコア採取を実施した.これにより,3次元堆積環境を同定した.設置した現地観測プラットフォームにより,侵食崖の崩壊過程における河川水文・地盤環境諸量の連続観測を実施した.平成22年度は,上記の観測結果を解析し,観測プラットフォーム周辺の高水敷堆積環境情報(地盤特性)との関係を明らかにした.具体的には,洪水(出水)イベント時の高水敷地下水の応答特性である.河川水位の上昇時における高水敷堆積層の透水係数は,0.75~1.25cm/sであり,粒度分析結果(0.07mm)より求めた高水敷堆積層の透水係数(4.0×10^<-5>~7.5×10^<-4>cm/s)より極めて大きな値であった.一方,河川水位の下降時は,地下水は高水敷地盤内鉛直方向へ浸透している観測結果が得られ,鉛直方向の地下水透水係数は1.9~3.4×10^<-4>cm/sとなり,粒度分析結果から求めた透水係数に近い値を示した.これらの結果から,河川水位の上昇時には,高水敷地盤内の地下水は河川水による水圧による側方に急激に浸透し,河川水位の下降時には,鉛直下方にゆっくりと浸透下降していく動態特性が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度は現地観測のプラットフォームを確立し,平成23年度に観測を開始した.23年度は宇治川の出水が比較的多く,過去10年間でも大きい出水(上流のダムの放流)が観測できた.その結果,出水時の高水敷堆積層内の地下水流動特性が明らかになった.これは高水敷堆積環境を考える上で非常に重要な知見であり,河道の地形変化とも密接に関係していることが推察される.よって本研究の目的である氾濫原マネジメントの高度化に資する有用なデータが得られているため,概ね順調に研究が進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
河川の出水と高水敷堆積層中の地下水動態との関係性とそれらの河道地形変化過程への組み込みを考えており,今後(最終年度)は地下水動態と河道地形の関係性に焦点を当て,研究を推進する.当初の計画での河道地形変化の予測コードの開発は問う研究成果の組み入れだけでは困難であると推察されることから,本研究では河川地形変化を高精度な予測コードに不可欠な水-地盤境界における地下水動態のモデル化を重点的に行う.
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