2011 Fiscal Year Annual Research Report
近現代における古日本染織の移動とコレクション形成に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22682001
|
Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
小山 弓弦葉 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部・調査研究課・工芸室, 主任研究員 (10356272)
|
Keywords | 美術史 / 古日本染織 / 近現代 / コレクター / 古美術商 / 岡田三郎助 / ビゲロー / フランク・ロイド・ライト |
Research Abstract |
本年度は、洋画家・岡田三郎助が蒐集した古染織(時代裂)コレクションの内、現在、埼玉・遠山記念館に所蔵される古染織コレクションの全容を調査しその形態や形態の変化、墨書やラベルといった記録を中心に調査を行った。また、資料を撮影しその画像付きデータベースをファイルメーカーで作成した.これは、大正期における古日本染織コレクションの性格や傾向をうかがう上で重要な基礎資料となる。また、日本国内における古染織コレグションの主要を占める、コレクターや古美術商の古染織コレクションとほぼ同時期に蒐集された海外のコレクターによる古日本染織コレクションの調査も、本年度から開始した。6月にはボストン美術館に所蔵されるビゲローコレクションの内、能装束コレクションに関する情報収集を行った。また、平成24年1月には、ロサンジェルス・カウンティ美術館にある、個人染織コレクターが明治~大正期に蒐集した未公開資料である江戸時代の袈裟のコレクション約110件の内70件あまりを調査し、写真を撮影して記録した。また、アリゾナ州スコッツデールにあるフランク・ロイド・ライト・アーカイブスにおいて、フランク・ロイド・ライトが蒐集した古日本染織コレクション87件を調査・写真撮影し、蒐集に関する資料を調査した。以上により、在米のコレクターが山中照会や古美術商・野村正治郎を通じて作品を購入したことが判明し、その時期や経緯についても明らかになりつつある。また、日本にある古日本染織コレクションとの関連性についても調査が可能となった。 以上の調査の結果得られた研究成果の一部は『「辻が花の誕生」-<ことば>と<染織技法>をめぐる文化資源学』(東京大学出版会)より平成24年3月末に刊行された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内・海外ともに調査は順調に進んでいるが、新たな情報によってさらに別のコレクションの調査の必要性も生じつつある。また、古日本染織コレクションの膨大な画像・調査データを利用しやすい形態にすることが今後の検討課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
調査を進めるにしたがって、これまで知られていなかった海外における古日本染織コレクションの情報が集積しつつあり、本研究課題においては、その内のすべてを調査することは時間的・経費的に困難な状況が見えつつある。本研究課題における調査範囲を絞りつつ、今後の研究課題を見据えていくことが重要である。
|
Research Products
(2 results)