2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22682005
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森平 雅彦 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (50345245)
|
Keywords | 東洋史 / 朝鮮史 / 東アジア交渉史 / 交通 |
Research Abstract |
本研究では、朝鮮史研究の立場から前近代東アジア交流史像をとらえなおす作業の一環として、中世の朝鮮半島と周辺地域との相互交流を成り立たせていた交通ルートを解明すべく、(1)高麗前期の対宋関係における海上航路、(2)高麗後期の対元関係における海上航路、(3)高麗~朝鮮前期における対日窓口港、(4)元・明代北京との陸上交通路、の4テーマを掲げている。 本年度、当初計画ではこのうち(2)を重点課題としていたが、韓国・震檀学会からのシンポジウム招聘をうけて急遽(4)に変更した。そこで、元の大都(北京)と高麗をむすぶ陸上交通路が公定駅路としての内陸ルートと民間次元の沿岸ルートの2方面で展開し、後者が明代の朝中間交通路の前提になったことを明らかにした。この成果は上記の国際シンポジウム(8月)で口頭発表し、また沿岸ルートについては現地調査(11月)を行って関係地の詳細比定を完了した。(1)については、韓国西海岸で最終現地調査(5・7月)を行ってルート比定を完了し、・昨年度外交船による利用率の高さを確認した江南(明州)航路について、その背景として従来指摘されてきた政治・経済的理由にくわえ、同航路が民間貿易船によって恒常的に使用されてきたことによる航海知識・技術の習熟度という技術的条件が作用しているとの結論を得た。(2)(3)についても概況把握をすませ、成果の一部を高麗-元関係史の論文・概説書(別記)とアジア海域史の概説書(刊行準備中)に反映させた。特に(3)については14世紀前半における高麗の対日給岸警備体制が高麗における対日通交体制の転機にして、朝鮮時代の対日通交体制の史的前提になるとの見通しを得た。 資料データベースについては「高麗・宋関係朝鮮史料集続編」の校閲を継続したが、『燕行録全集』にもとづく大陸陸上ルート事例集は、担当学生の異動のため作業を次年度に持ち越すこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した4テーマのうち「大陸陸上交通の実像」は論文化を完了、「高麗・宋航路の変遷」は資料調査を済ませて論文執筆に入った。「モンゴル時代の朝鮮半島をめぐる航路」「対日通交窓口の変遷」は予備調査により一定の見通しを得、後者については2012年度に学会発表を行うことが内定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2012年度内に4テーマのうち残る「高麗・宋航路の変遷」の論文化を完了し、学会発表の準備作業を通じて「対日通交窓口の変遷」についても論文化めめどをつける。また最終年度までに「モンゴル時代の朝鮮半島をめぐる航路」についても調査より得られた知見を整理して論文化を進める。これと並行して、未実施の現地調査(中国遼西地方内陸部・遼東地方、韓国南岸東部)を2ヶ年度内に実施し、また史料データベースの作成を進める。
|
Research Products
(6 results)