2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22682008
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高瀬 克範 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00347254)
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Keywords | 考古学 / 先史学 / 土器編年 / 年代測定 / カムチャツカ |
Research Abstract |
カムチャツカ半島およびオホーツク海北岸出土土器の年代決定に資する22点のサンプルについて放射性炭素年代測定をおこなった。また,土器の型式論的検討およびかつて発掘調査された基準資料の調査もあわせて実施し,以下の点が明らかとなった。 1)オホーツク海北岸で古コリャーク文化の土器付着炭化物と,土器とともに出土した炭化材の測定値の比較した結果,前者は後者よりも200~800年ほど古くなる傾向がある。 2)オホーツク海北岸の古コリャーク文化の信頼できる年代は紀元後7~15世紀に集中する。 3)カムチャツカ半島南部から出土する内耳土器は,型式論的特徴から2型式に分類することが可能である。Type-1は,耳部が小さく,鉄鍋のように口縁部の張り出しが明確に作出されているもので,器壁はうすく文様や突起がつかない。Type-2は,大きな耳部をもち,口縁部が単純に立ち上がる器形である。器壁は厚く,突起や文様(刺突文)が施される。 4)上記Type-1およびType-2が出土した遺構から採取した炭化材の放射性炭素年代測定値から,Type-1は紀元後15世紀後半から17世紀前半に,Type-2は17世紀後半から19世紀に位置づけられる。 5)重要な基準資料でありながら詳細が公表されていない北海道大学フィールド科学センター博物館所蔵の千島列島出土考古資料について整理作業を開始した。今後,カムチャツカ半島との編年対比をおこなうとともに,情報共有を目的とした図録の刊行をめざす。 6)カムチャツカ半島における大規模調査に,Jesup探検隊の一貫として1910~1911年に実施されたW・ヨヘルソンによる調査がある。この発掘の出土遺物はこれまでほとんど内実が明らかになっていないが,ロシア国立歴史博物館収蔵コレクションの調査により概要を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カムチャツカ半島南部の内耳土器の編年は,きわめて良好な結果をえた。また,W・ヨヘルソン資料の概要が判明したことも,非常に意義のある副産物であった。カムチャツカ半島北部からオホーツク海北岸の古コリャーク文化期の土器については,土器の胎土内に炭化植物を含む資料が少なく,また胎土内炭化物を分析しても海洋リザーバー効果の影響をうけている割合が当初の予想よりも高いことがわかってきたため,同じ遺跡から出土した木製品や単価剤などの測定例を増やして対処している。
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Strategy for Future Research Activity |
内耳土器については,追加の年代測定をおこなったうえで2012年度中に英語論文に研究成果をまとめる。古コリャーク文化期の土器については,土器の胎土内炭化物の測定だけにこだわるのではなく,同じ遺跡から出土した炭化物や木製品などの測定例を増やすことで信頼性の高い年代値を蓄積する。カムチャツカ半島北部における資料数が不足しているため,2012年度に現地において発掘調査を実施することで信頼性の高い土器資料を収集したうえで,測定事例を増やす予定である。北海道大学フィールド科学センター博物館所蔵の千島関係資料,W・ヨヘルソンのコレクションは,2012年度中にデータを整理し,2013年度に成果を刊行する。
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Research Products
(4 results)