2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模イノベーションにおける国際競争力構築メカニズム
Project/Area Number |
22683007
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
立本 博文 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (80361674)
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Keywords | 大規模イノベーション / アーキテクチャ / プラットフォーム / ビジネス・エコシステム / 標準化 / 国際競争力 / 自動車電子システム |
Research Abstract |
平成23年度は、研究目的に記載した項目のうち、理論枠組みの構築および、二事例の比較分析のうちのベース事例の調査を行った。本研究は、大規模イノベーションにおける国際競争力を明らかにすることが目的であるが、この「大規模イノベーション」について、近年、多くの研究がなされている。ビジネス・エコシステム、プラットフォーム、オープン・イノベーションなどが、そのキーワードになっている。これらの研究は、2000年以降急増したため、必ずしも、コンセプト・フレームワーク内ですら一貫した理論枠組みを共有していない。しかし、これらの研究が同じような現象に焦点を当てていることは明らかである。競争力構築メカニズムを明らかにするためには、これらの研究で、どのような点が競争戦略上の要点として指摘されているのかを整理する必要がある。このため、本年度は、理論枠組みの構築を行った。今後、この理論枠組みによって、二事例の比較分析をおこなう。 比較分析では、ベース事例と対照事例の2つの事例の比較を行う。研究計画書では、ベース事例として車載電子システム、対照事例としでスマートグリッドを取り上げている。車載電子システムの調査は、昨年に引き続き行い、一定の成果を収めることできた。車載電子システムの事例分析として以下の事実発見があった。車載電子システムの複雑化を受けて、2000年以降、欧州自動車産業を中心に込標準化が進んでいる。この標準化は、フォーラム/コンソーシアムで行われる「コンセンサス標準化」である。コンセンサス標準化は、1980年末頃に行われた独禁法の緩和(より正確には、新ガイドライン)によって、企業のコンソーシアム活動が積極的に認められたことに起因している。このコンセンサス標準が、グローバルな国際標準となり、国際競争力に大きな影響を与えている。特に車載電子システム分野では、AUTOSARコンソーシアムが大きな影響力を持っており、企業の協調行動とともに、競争戦略も激化している。この成果は、論文および書籍として公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大規模イノベーションの成功要因、さらには、その国際展開による国際競争力の獲得メカニズムの探求を目的としている。研究計画は、理論枠組みの構築と、事例の比較分析の2つから成り立っている。比較研究は、車載エレクトロニクスとスマートグリッドの2つを予定している。これらの計画のうち、理論枠組みの構築と、比較分析の内の車載エレクトロニクスのケース研究については、大きな進展があった。これに対して、スマートグリッドのケース研究については、2011年の震災の影響から、電力産業へのインタビュー調査が困難になっており遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
比較研究のためのベース事例(車載エレクトロニクス)はすでに完了しているが、対照事例(スマートグリッド)の研究が遅延している。この理由は、震災の影響と、その後の電力産業への厳しい世論によって、電力産業がインタビュー調査に躊躇している為である。この困難を乗り越えるために、2つの方策を準備している。(1)1つめは、スマートグリッド調査をインタビュー中心から、もう少し、二次資料の割合を増やしながら引き続き継続する方法である。(2)2つめは、対照事例として、スマートグリッドとは別の事例を取りあげることである。大規模イノベーションは成功したが、海外展開に失敗した事例としてimodeの事例を対照事例とすることを検討している。現状では、(1)(2)を並行して行い、本研究計画の目的に沿った成果が出せるように努力している。
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