2011 Fiscal Year Annual Research Report
変動期の社会における法秩序の再構築――南アフリカとカンボジアの比較社会学的研究
Project/Area Number |
22683012
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
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Keywords | トランジショナル・ジャスティス(移行期正義) / クメール・ルージュ特別法廷 / 移民 / 紛争後社会 / カラード |
Research Abstract |
南アフリカでは、ケープタウンにおいてカラードによる権利主張の近年の動向に関して、ジョハネスバーグにおいてアフリカ諸国からの移民が直面する問題に関して、それぞれ現地調査を行った。結果、一見すると別個の事例と思われる両者が、アパルトヘイト後の南アフリカにおける一連の社会再統合政策のなかで生じてきた、とする仮説的なフレームワークを得た。その成果の一端は、「南アフリカにおける和解政策後の社会統合」という論考にまとめ、公表した。 カンボジアでは、クメール・ルージュ特別法廷の社会的受容を分析する英文論集刊行の企画を開始した。報告者を含め6名の執筆者が実証主義的アプローチに基づき、従来主流の法学的・政治学的な議論とは異なる考察を提出することを目的としている。平成23年度は、担当者との打ち合わせのほかに、法廷関係者への聞き取り、NGOによるアウトリーチ資料の閲覧、ローカル・メディアの報道分析を実施し、ローカル・オーナーシップおよびメディアによるアジェンダ・セッティングに関する論考を執筆した。 比較研究の理論的側面としては、前年度から継続中の移行期正義論の網羅的な把握を踏まえて、南アフリカの真実和解委員会とカンボジアの特別法廷の相違点と共通点、そしてこの認識が移行期正義論に貢献する点を主張する論文を執筆した(平成24年4月刊)。この論文は、紛争後社会が法秩序の再構築をめざす際の起点となる社会的プロジェクトの分析を行ったものである。この論文の考察を通じて、「持続的な社会的効果をもたらす条件が何であるのか」、「プロジェクト外部の要因との相互作用を整理するフレームワークがどういうものか」という課題を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間の半分にあたる2年間で、各比較対象社会における移行期正義に関する問題点を把握する作業はほぼ終えた。相互比較を行うための理論的フレームワークの構築も開始し、一部、論文による成果として公表した。また、英文による成果公表の準備を積極的にすすめ、執筆・投稿・ワークショップ開催準備等、当初の予定どおり進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行形の政策プロジェクトを分析対象としているため、継続的な状況把握が必要である。また、(とりわけ現地の)関連研究者との意思疎通を緊密にはかることにより、編著や共著といった形式の成果公表にも積極的に取り組む。
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