2012 Fiscal Year Annual Research Report
変動期の社会における法秩序の再構築――南アフリカとカンボジアの比較社会学的研究
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22683012
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 社会学 / 移行期正義 / 紛争 |
Research Abstract |
南アフリカでは、ケープタウンとジョハネスバーグにおいて、社会的資源の再配分をめぐる人種間・民族間の緊張関係に関する聞き取り調査を行った。ケープタウンではカラードとカテゴライズされる人々のうち、そのカテゴリーを否定し、先住民コイサンとしてアイデンティティ・ポリティクスを展開しているグループに注目した。ジョハネスバーグでは、アフリカ各地からの移民が集住するヨービル地区で、どのような社会秩序創出の動きがあるのか、コミュニティ・メディアの存在に着目し、ジンバブエ人研究者と共に共著論文を執筆した。 カンボジアでは、プノンペンにて、特別法廷の社会的受容を社会学的観点から分析することをテーマにしたワークショップを開催し、カンボジア・イギリス・シンガポールからの関連研究者と意見交換を行い、論集刊行へ向けた修正作業を進めた。また、ローカル・メディアの実証分析を継続し、体制側/反体制側の報道傾向が、特別法廷の正当性にどのような影響を及ぼしているか、検討した。 上記の実証研究を、従来の移行期正義分野における理論的展開に重ね合わせることで、「移行期正義プログラムの意図せざる結果」や「同プログラムの設定する目標とは異なる社会的効果」に対する考察が、十分に議論されてきていないことが明確になってきた。そこで、その知見をまず日本社会学会大会において報告し、関連研究者からのコメントを受けたうえで、なかでも社会学理論における社会運動論のフレームが、上記の問題を考察するにあたり有益であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた現地調査を予定どおり実施できたために、その知見にもとづき調査先の研究協力者との 共著論文の執筆も順調に進んでいる。社会学理論へのインプリケーションを得るという課題は、移行期正義分野の先行研究を計画的に検討できたことで、社会運動論との接合という、具体的な切り口を手にすることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、理論的な議論の展開に注力する。また、総合的な実証データを整備するための補足調査を行う。
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