2012 Fiscal Year Annual Research Report
大質量星および超新星による星間ダストの供給・破壊過程の統一的解明
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22684004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野沢 貴也 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (90435975)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ダスト(星間塵) / 超新星爆発 / 大質量星 / 可視光赤外線観測 / 化学進化 / 超新星残骸 / 質量放出 / 星間衝撃波 |
Research Abstract |
赤外線天文衛星AKARIの観測データベースを基に、超新星爆発から10-100年が経過した非常に若い超新星残骸の赤外線探査を行った。その結果、近傍銀河NGC 1313で起こったIIn型超新星SN 1978Kにおいて強い中間赤外線放射が検出され、この赤外放射は、超新星親星の恒星風中で形成されたダストが、現在超新星衝撃波に掃かれ加熱されることによって説明できることを示した。また、ダストの典型的初期サイズは0.3ミクロンで、組成はシリケイト質、その形成量は太陽質量の1000分の1以上であることも明らかにした。 低金属量星形成ガス雲中での重元素ガス降着によるダストの成長を調べ、金属量が太陽の10万分の1ほど低い収縮ガス中でもダストの成長が効率的に起こることを明らかにした。また、ダスト成長を考慮した収縮ガス雲の熱進化の数値計算を行い、成長したダストの熱放射によるガスの冷却によって、ガス雲は太陽質量の0.1倍程度のガス塊へ分裂することを明らかにした。これらの結果は、現在最も金属量の低い星として知られているSDSS J102915+172927の形成過程を説明でき、第一世代星の超新星爆発時におけるダストの形成が小質量星形成に不可欠であることを証明した。 銀河系の星間減光曲線に基づいて、星間ダストの組成やサイズ分布を決定する包括的な研究を行い、星間ダストの主な成分は-3.5の冪乗サイズ分布を持つ炭素質ダストとシリケイト質ダストであることを確かめた。またダストの最大半径の決定には、近赤外域の減光曲線が重要であることを示し、その観測された曲線の傾きから、半径の上限値は0.2から0.3ミクロンの範囲に制限されることを突き止めた。また、ダストの素過程を組み込んだダストサイズ分布の進化理論モデルから、超新星衝撃波による星間ダストの破壊は、銀河形成の初期段階において非常に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で遂行した爆発後10-100年の若い超新星残骸の赤外線探査は、SN 1978Kでの星周ダスト破壊効率、および恒星風で形成されるダストの典型的サイズを導いており、大質量星の活動に伴うダストの形成・破壊過程を明らかにしつつある。また、次世代の赤外線天文衛星・望遠鏡による系外銀河中の非常に若い超新星残骸の検出可能性を見積もり、このような天体は本研究の目的を達成する上で優れた観測ターゲットであることを示した。 減光曲線から得られた星間ダストサイズ分布の-3.5乗の冪については、星間空間での重元素降着によるダスト成長、ダスト同士の衝突破砕、超新星衝撃波によるスパッタリングによる破壊、のバランスで決定されることも明らかにした。研究代表者を含む研究グループによって構築されたダストサイズ分布の進化理論モデルは、銀河系内ダストの冪乗サイズ分布は再現できていないものの、世界で初めてすべてのダスト素過程を一貫して組み込んだという点で、その意義・今後の有用性は極めて大きい。 その一方で、研究代表者らによって提案された「ALMAによってSN 1987A内の低温ダストを空間的に分解する」観測は、2011年度に受理されたものの観測の条件と天候の状態が合わず結局実施には至らなかった。そのため、この観測から期待されていたSN 1987Aの放出ガス中でのダスト生成量とダスト温度は得ることができず、II型超新星で形成されるダストの組成、サイズ分布、量を観測的に明らかにするためには、別の観測戦略を考える必要がある。 また、これまで定常で扱われていたダスト形成理論を非定常に拡張し、その数値計算コードを完成させたが、得られた結果と定常ダスト形成計算結果との一致点・相違点の解釈に時間を要し、2012年度内に研究をまとめることができなかった。現在、論文投稿準備中であるが、当初の予定と比べて数か月遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度に開発した非定常ダスト形成計算コードを駆使し、Ia型超新星や超新星SN 1987Aに対して、その放出ガス中で形成されるダストの組成、サイズ分布、量を明らかにする。特に、Ia型超新星によって放出されたガスは、重力崩壊型超新星のものよりも密度が低いため、ダスト形成時における非定常の効果が顕著に現れると期待される。そこで、Ia型超新星のモデルに対して非定常ダスト形成計算を実行し、定常ダスト形成計算の結果と比較することにより、非定常の効果や定常ダスト形成計算の適用性を明らかにする。 一方、近年の遠赤外線・サブミリ波の観測は、SN 1987Aの放出ガス中で太陽質量の0.4-0.7倍ものダストが形成されていたことを報告している。そこで、SN 1987Aのモデルに対して非定常ダスト形成計算を行い、形成されるダストの組成、サイズ分布、量を明らかにし、関連する種々の観測データと比較してSN 1987Aでのダスト形成過程を議論する。さらに得られたダストのサイズ分布や空間分布を基に、リヴァース衝撃波によるダスト破壊計算も行い、形成されたダスト量のどれほどの割合が星間空間に放出されるかを予測する。 また、超新星衝撃波による星周ダストの破壊計算も行い、若い超新星残骸の赤外線観測結果との比較から、星周ダストの組成やサイズ分布を制限する研究を行う。ダストの破壊効率や加熱効率はガスの密度に依存するため、ガス密度をパラメータとして衝撃波中での星周ダストの破壊過程・熱放射量を系統的に調べる。そして、得られた結果を既存の赤外線観測データとを比較・検討することにより、ダストの初期サイズや存在量、ガスの密度を明らかにする。また、これらの結果から超新星親星の質量放出率や星周ダストの形成環境を評価し、星周ダストをプローブとして超新星親星の素性を同定する新たな研究手法を切り開く。
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[Presentation] Dust in Supernovae2012
Author(s)
Takaya Nozawa
Organizer
Kavli-IPMU Focus Week for Supernovae Near and Far
Place of Presentation
Kavli-IPMU, Kashiwa, Japan
Year and Date
20121212-20121214
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[Presentation] On the non-steady-state nucleation rate2012
Author(s)
Takaya Nozawa
Organizer
3rd Workshop of Nucleation Related to Cosmic Dust & its Contribution to the Organic Formation in 4.6 Billion Years Ago
Place of Presentation
Hotel Sakan, Akiu, Sendai, Japan
Year and Date
20120723-20120725
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