2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22684011
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
馬場 秀忠 独立行政法人理化学研究所, 情報処理技術チーム, 仁科センター研究員 (10415268)
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Keywords | 中性子過剰核 / ピグミー双極子状態 / データ収集 / 元素合成 |
Research Abstract |
本研究は核物理が担う大きなテーマである元素の起源を解明するために、元素合成に関わる中性子過剰核の核データを広い範囲で測定することを目標としている。核データの中でも特に中性子捕獲断面積およびピグミー双極子状態の強度分布について系統的な研究を行う。ピグミー双極子状態は中性子過剰核の中高エネルギー領域に現れる特徴的な状態で、その強度分布により中性子捕獲断面積が左右されるため非常に重要なパラメータである。一部の中性子過剰核についてはピグミー双極子状態が報告されているが、系統的な研究は未だなされていない。理化学研究所RIビームファクトリーでは現在、世界的にも圧倒的なパフォーマンスで中性子過剰核ビームを供給しており、本研究ですでに開発された高速データ収集システムと組み合わせることで系統的な研究が可能となる。当年度はピグミー双極子状態を測定するための大型高エネルギーγ線検出器を開発した。ピグミー双極子状態はほとんどの場合粒子崩壊するが、約1%程度の確率でγ線直接崩壊する。直接崩壊のγ線は5~10MeVという高いエネルギーを持つため、高エネルギーγ線検出器を用いればピグミー双極子状態を選択的に測定することができる。高エネルギーγ線に対し十分な性能を有する検出器が必要なため本研究では新たに検出器の開発を行った。本研究では大型高エネルギーγ線検出器としてLaBr(Ce)シンチレータを用いた。LaBr(Ce)はNaI(T1)に比べて分解能が良く、密度も大きいので高エネルギーγ線に関して非常に有効なシンチレータである。形状は3インチφ×6インチであり10MeVγ線を検出するのに十分な大きさである。またγ線が光速の約60%で飛行している粒子から放出されるためドップラーシフトの影響をうける。そのためシンチレータの光学窓を両端に設置することで位置情報を取得できるように工夫がしてある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の開発要素である高速データ収集システムおよび大型高エネルギーγ線検出器が完成し、中性子過剰核に関する核データを収集する装置が完成した。理化学研究所RIビームファクトリーにおいても加速器開発が進み中性子過剰核ビームを高強度で供給することが可能となった。従って、必要な要素がそろったため核データ収集を進めることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に必要な要素である高強度中性子過剰核ビーム・高速データ収集システム・大型高工ネルギーγ線検出器が利用できるようになった。今後はこれらを用いて元素合成に関わる核データの収集を進めていく。
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