2011 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系高温超伝導体における圧力・キャリア制御による超伝導発現機構の解明
Project/Area Number |
22684016
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
深澤 英人 千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (90361443)
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Keywords | 強相関電子系 / 低温物性 / 磁性 / 物性実験 / 超伝導 |
Research Abstract |
本研究の中心課題である圧力の異方性を考慮に入れた鉄ヒ素系超伝導の圧力効果を詳細に調べるために、昨年度に改良型の小型キュービックアンビル装置を導入した。小型キュービックアンビル装置は、キュービックアンビル装置の六方向からの定荷重による静水圧性の良さを保ったまま、装置全体を重量・体積ともに約1/4まで縮小させた装置である。そのうえで、最大発生圧力が通常の装置の約1/2である10GPa程度まで到達可能である。これまで小型キュービックアンビル装置の利用に関しては、千葉大学大学院理学研究科・小堀洋教授、産業技術総合研究所・竹下直博士と共同で進めてきた。小堀教授は高圧NMR/NQR研究の第一人者であり、竹下博士は小型キュービックアンビル装置を提案した研究者である。昨年度の同装置の導入により、備品関連の整備は概ね整ったので、本年度は消耗部品を利用しつつ、小型キュービックアンビル装置を利用した10GPa級^<63>Cu-NQRを行なった。小堀教授、竹下博士との見極めで、可能であると判断した改良案は以下である。 1.配線における配線材の補強 2.ガスケットの選定(パイロフェライトからMgOへの変更) 以上の改良点について検討し、新規部材を購入し、^<63>Cu-NQRを行なった。 以上の改良点に加え、昨年度に安定して運用を行なえるようになった、改良型ブリッジマンアンビルセルによるNMR/NQR測定にも取り組んだ。プローブの整備が終了したので、実際に試料をセットしてNMR信号が検出できるかを検証した。そのための低温寒剤が必要であり、本年度は、高圧セルのための消耗部品代とともに寒剤代が大幅に必要になった。さらに、本年度中にカナダTRIUMFミュオン施設においてK高濃度Ba_<1-x>KxFe_2As_2のミュオン緩和法による測定を行なった。 また、キャリア制御による鉄系超伝導体Ba_<1-x>KxFe_2As_2のNMR/NQRによる研究として国際会議・国内学会で発表を行ない、これらの成果を、まとめた論文を執筆し、このほど掲載が決定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧力実験は特殊な技術が必要とされる実験であるが、できるだけ人材に依存しない実験の成功率向上を目指し、より安定した実験手法を開発している。キャリア制御による超伝導発現機構の解明について、これまでの成果をまとめた論文を投稿し掲載が決定したので、おおむね順調だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度信号の検出に成功した改良型ブリッジマンアンビルセルによるNMR実験に関してより詳細に研究を行ないたい。また、キュービックアンビル装置に関しても鉄系超伝導体に対してNQR実験を行なう予定である。キャリァ制御系Ba_<1-x>K_xFe_2As_2に関しては、本年度までの研究でその全体像は明らかになってきたものの、K濃度の高い領域での研究はまだ発展段階であり、この点について重点的に研究を展開したい。
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Research Products
(17 results)