2011 Fiscal Year Annual Research Report
石灰質有孔虫のバイオミネラリゼーションの細胞生物学的解明
Project/Area Number |
22684027
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
豊福 高志 独立行政法人海洋研究開発機構, 海洋・極限環境生物圏領域, チームリーダー (30371719)
|
Keywords | バイオミネラリゼーション / 有孔虫 / 細胞内環境 / 実験古生物学 / 蛍光観察 / 地球生物学 |
Research Abstract |
本年は海洋の主要な炭酸塩生産者の一つである有孔虫を使って、石灰化時の細胞内小器官(ミトコンドリアおよび細胞内骨格)と細胞内のカルシウム、マグネシウムの局在、pHの分布を観察した。カルシウムとpHについては同時観察ができるようになった。これによって有孔虫細胞が石灰化時のどのタイミングでカルシウムを取り込み、pHを変化させるのかを組み合わせて観察ができるようになった。その結果、従来の観察ではわからなかった、細かい順序が見えるようになり、従前の考察とは異なった新しい知見が得られた。有孔虫類は石灰化時にい型となる有機膜を展開する。個々に石灰化が始まるのであるが、その時pHが上昇するが、細胞内部から供給されるカルシウムは限定的であった。ある程度殻の形が格好になってくると、細胞内部のカルシウム濃度が増し、細胞の内外を活発に移動し始める。特に殻の外側に移動する様子がはっきりと見て取れた。このような機序については未だ知られておらず、大変重要な結果が得られたと考えている。また、マグネシウムの観察からも興味深いことがわかってきた。有孔虫殻のマグネシウム含有量は過去の水温計として利用されている。このマグネシウムがどのように殻に取り込まれるかは多くの研究者の興味となっている。観察の結果、細胞内のマグネシウムの分布はカルシウムと全く異なっていた。いつ、どのタイミングで取込みが起こっているかを明確にすることが今後の課題である。昨年度導入したラマン分光顕微鏡を用いた観察では、まずは化石有孔虫を用いて殻内の微小領域(1マイクロメートルオーダー)における結晶系の違いについて定性的な分析に成功した。あわせて、TEMを使った細胞生物学的解析を推し進めるため、凍結置換処理法の有用性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響で遅れも心配されたが、研究支援者を雇入れ、効率的にデータを取得することが出来る体制を構築することができたため、概ね順調に進展していると考えられる。今後も目的に向けて研究を推進する。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究は計画通り遂行している。特に実験について順調に進んでいる。本研究計画事業についての研究体制の構築は完了しており、今後もこのペースで研究を推進する。論文として成果を報告するため、執筆上必要な論文校閲などを活用する。
|
Research Products
(7 results)