2011 Fiscal Year Annual Research Report
機能性酸化物表面における光触媒機能の1分子分析とメカニズム解明
Project/Area Number |
22685002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥山 弘 京都大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (60312253)
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Keywords | 単一分子 / STM / 光反応 / 酸化物 |
Research Abstract |
昨年度立ち上げた光を導入可能な走査トンネル顕微鏡装置(STM)の調整と、実験を主に行った。まず実験時間を長時間確保するため(20時間以上)、液体ヘリウムタンクを断熱シートで囲みヘリウムの有効利用を試した。現在は最高で14時間まで確保できているが、さらに効率を上げるために低温ヘリウムガスの有効利用を考えている。STMヘッドを平衡温度(4.5K)に早く到達させるために、ヘリウムタンクとヘッドを結ぶ銅の網線の増設を行った。また、振動ノイズに対処するため真空装置全体を空気ばねで持ち上げ、これにより環境ノイズを除去することに成功した。さらに光を導入するための孔の位置の再調整を行った。実験では、水分子のクラスタ形成、フェノールー水分子のクラスタ形成を行った。フェノール単独では水素結合による特徴的な3量体が形成されるが、フェノールー水分子混合系では両者が結合した水和物が形成された。フェノールは酸性を示すことから、フェノールのプロトンの水分子への移動(水和)が可視化できる可能性がある。今後は光励起によりこの水和反応を誘起し、非局在化したプロトンの観測を行う。銅を酸化した酸化物モデル表面であるCu(110)-(2x1)0を作製し、表面観察と水分子の吸着実験を行った。水分子はテラスではなく、(2x1)のドメイン境界に選択的に吸着することが明らかとなった。被覆率を上げるとテラス上にも吸着し、[1-10]方向に伸びた構造が確認された。特にドメイン境界は特異な電子状態が形成されていると考えられるので、今後、光照射により水分子の光反応が期待される。これらとは別に、フェノール分子とチオフェノール分子をCu(110)表面に吸着し、吸着状態を観測した。低温では両者の水酸基、チオール基は保持されてフェニル環を表面に平行にして吸着すること、室温では水酸基、チオール基の水素が脱離し、表面に酸素、硫黄を介して吸着することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STMの立ち上げでは予想以上にトラブルが発生し、修理や調整に時間を要したが、安定したヘリウム温度での実験や光の照射も可能となり、水分子の分解のみならず、酸性分子のプロトン放出など重要な光誘起反応への展開も見えてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、予定していたチタニア表面での水分解反応を調べるに当たり、表面の不均一性が高いため、まずはよく規定されたモデル表面であるCu(110)-(2x1)を用いて水分子の吸着、分解反応を調べる。この表面においてもドメイン境界(酸素欠損に対応)など特異な電子状態が確認できたので、この局所的な反応場が水分子分解反応に有効となるかを調べることで、酸化物表面と水分子の相互作用に関する知見が得られる。さらに種々の酸性分子「(フェノール、チオフェノールなど)と水分子の複合体を表面に形成し、光照射によりプロトンの水和(非局在化)を可視化し、その環境依存を調べることで、表面におけるプロトンの振る舞いという観点から新しい知見を得る。
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Research Products
(4 results)