2012 Fiscal Year Annual Research Report
含窒素二重結合化学種の徹底活用による機能性材料の開発
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22685005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 直和 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00302810)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アゾベンゼン / ホウ素 / 蛍光 / 配位結合 / 窒素 / 共役系 |
Research Abstract |
蛍光性化合物の蛍光発光特性を電子の授受によって制御することは、発光性材料へと応用することを考えた場合に重要である。そこで、本年度は窒素-ホウ素配位結合を有する含窒素二重結合化合物について、酸化還元による蛍光発光のスイッチングを行った。はじめに、ホウ素置換アゾベンゼン誘導体の電気化学的特性をサイクリックボルタンメトリー測定によって明らかにした。ホウ素置換基を有することで無置換アゾベンゼンと比較して最高被占軌道のエネルギー準位が上昇し、容易に還元しやすくなっていることが明らかとなり、さらに一電子還元体が安定であることが示唆された。その結果をもとにして、熱的に安定なジボリルアゾベンゼンの一電子還元体を合成した。一電子還元にともなって蛍光発光特性は消失し、その後に酸化することで蛍光発光特性が再生することを見出した。酸化・還元による蛍光のオン-オフ制御を達成した。アゾ基とホウ素の組み合わせが本研究対象化合物の蛍光発光の鍵であったので、2,2'-ジボリルアゾベンゼンのホウ素の一方をリンへと置き換えた類縁体へと展開することを試みた。しかし、リン置換基とホウ素置換基をともに有するアゾベンゼン誘導体の合成を検討したが、合成には至らなかった。また、2,2'-ジボリルアゾベンゼンのホウ素置換基を両方とも置き換えた、二つのリン置換基を有するアゾベンゼン誘導体を合成したが、蛍光発光は確認できなかった。蛍光発光特性の発現には典型元素の種類も重要であることが確認された。また、二つのケイ素置換基を有するアゾベンゼンも合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は窒素-ホウ素配位結合を有する含二重結合化合物について、蛍光発光特性を有する化合物を開発し、その利用による機能性材料の開発を目指すものである。当初の研究目的で予定していた内容についてある程度達成されていた部分と予定通りには達成されていない部分の両方がある。ただし、研究開始段階では予想していなかった成果も得られているため、「遅れている」ではなく、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに窒素-ホウ素配位結合を有し、蛍光発光特性を有する含二重結合化合物の開発とその性質の解明について重点を置いて研究を進めてきたが、今後はこれまでに合成した蛍光性化合物の利用による機能材料開発へと、研究の重点をシフトしていく予定である。そのために、物理化学的手法および生物有機化学的手法も駆使して、研究を推進していく。
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