2011 Fiscal Year Annual Research Report
筒状縮環共役系分子“πベルト”の創製:新規非平面ナノカーボン鍵物質としての顕在化
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22685006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20397615)
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Keywords | カーボンナノチューブ / スマネン / πベルト / ナノカーボン / 酸化的環化 |
Research Abstract |
ボウル型π共役系分子スマネンをビルディングブロックとして用いたベルト状縮環π共役系化合物(πベルト)の合成を目指し、研究に取り組んだ。標的分子として36個のベンゼン環が筒状に縮環した分子を設定した。合成戦略は、スマネンを適切な共役系を持つπ共役系のスペーサーを介してマクロサイクル化し、最後に分子内環化によって縮環構造の構築するというものである。今回、縮環構造構築方法を種々検討した。その結果、下記の分子内の酸化的環化が有効であることが明らかになった。 スマネンとジ-p-トリルメタノンをt-BuOK存在下、加熱することで脱水縮合し、スマネンのトリベンジリデン体を高収率で合成した。得られた化合物の分子内酸化的環化反応を検討した。種々の酸化剤を検討したところ、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンとメタンスルホン酸の組み合わせで反応させた時に対応する分子内酸化的環化体が中程度の収率で得られた。得られた環化体は、環化の位置に基づくC3対称でヘミフラーレン骨格を部分構造とする異性体と非対称な異性体の2種の混合物であった。これらの構造は、2次元NMRおよびMALDI-MASSスペクトル測定から決定している。この環化体は、ブラックライト照射下で青色の発光を示した。 また、スマネンのベンジル位酸化によりトリオキソスマネンも合成した。この化合物にグリニャール試薬を反応させると立体選択的に1,2-付加反応が進行した。これにより、スマネンベンジル位への求核剤の導入も可能になった。上記のような塩基を用いたベンジルアニオン経由のベンジリデン体合成法に相補的な環化前駆体合成法として位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難しいと考えられる高歪みな縮環ベンゼン構造を構築する方法を見出したから。
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Strategy for Future Research Activity |
πベルト合成のために必要な各工程の反応の検討をモデル実験を上手く活用しながら展開し、効率的にπベルト合成を目指す。
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