2012 Fiscal Year Annual Research Report
筒状縮環共役系分子“πベルト”の創製:新規非平面ナノカーボン鍵物質としての顕在化
Project/Area Number |
22685006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20397615)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / スマネン / πベルト / ナノカーボン / 酸化的環化 |
Research Abstract |
ボウル型π共役系分子スマネンをビルディングブロックとして用いたベルト状縮環π共役系化合物(πベルト)の合成を目指し、研究に取り組んだ。引き続き、36個のベンゼン環が筒状に縮環した分子を標的分子として設定した。合成の鍵反応の一つとして位置づけられる最終工程の分子内酸化的環化反応について、精力的に検討した。 スマネンとビス(3,5-ジメチルフェニル)メタノンの縮合体に対して、分子内酸化的環化を検討した。その結果、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノンとスカンジウムトリフラートを組み合わせると非常に高収率で反応が進行することがわかった。さらに、反応は位置選択的に進行し、C3対称なヘミフラーレン骨格を部分構造に有する異性体を与えた。この位置選択性は、昨年度見出したスマネンとジ-p-トリルメタノンとの縮合体の反応で環化の位置異性体混合物が得られることと対照的である。反応機構を考察するため、反応をNMRによって追跡した。その結果、環化と開環の平衡が示唆され、それにより最も熱力学的に安定な異性体に収束したと考えられる。また、フェニル基上の3,5-ジメチル基の立体障害のため、C3対称な異性体が安定構造として得られたと考えられる。得られたC3対称な縮環体を密度汎関数法により構造最適化を行ったところ、スマネンよりも歪みが大きくなっていることが判明した。すなわち、この縮環方法が高歪み分子合成に有用であることが示された。 続いて、πベルトへ展開するためのスマネンビルディングブロック合成の最初の工程を検討した。スマネンの3つの芳香環のうち1つの芳香環を反応しないように塞ぐため、2,5-ジクロロ-2,5-ジメチルヘキサンとのフリーデルクラフツアルキル化を行ったところ、選択的に一つだけ導入することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鍵反応の一つである分子内縮環反応をほぼ確立できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
πベルト合成のための合成戦略の部分見直し・修正を柔軟に行いながらπベルトを合成する。
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Research Products
(3 results)