2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22685008
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
有川 康弘 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30346936)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / NO還元サイクル / ニトロシル / 金属酵素 / 光照射 / 二核錯体 / ピラゾリルボラト / ルテニウム |
Research Abstract |
本研究は、我々が達成した独自の一酸化窒素(NO)還元サイクルに注目し、各ステップについて変換効率を上げるとともに、触媒反応への展開を図る。そのサイクルの中で、最も効率の低いステップは、N2O分子の脱離のステップである。この変換は、N-Nカップリング二核錯体にプロトン酸を作用させることにより進行した。しかし、塩化メチレン溶媒中、プロトン酸としてHBF4を使用した場合、目的とするオキソ架橋錯体は得られるが、収率は21%であった。さらに、副生成物として、酸化されたジカチオン性ジニトロシル錯体が収率43%も発生した。 N2O分子の脱離は、光照射により進行することを見出した。N-Nカップリング二核錯体をジエチルエーテル溶媒中、高圧水銀灯を用いて光を照射し、可視紫外吸収スペクトルにより反応を追跡したところ、目的とするオキソ架橋錯体に特徴的な600 nm付近のピークの増大が観測された。そこで、実際に単離を試みたところ、オキソ架橋錯体を収率52%で単離した。反応溶媒として、塩化メチレンやアセトニトリルを用いた場合、反応がきれいに進行しなかったが、エーテル系溶媒(THFやシクロペンチルメチルエーテル(CPME))では、オキソ架橋錯体を収率45%(THF)および66%(CPME)で単離した。高圧水銀灯を用いて光を照射することにより、目的とする錯体の収率が向上した。また、N2Oの発生もガスクロマトグラフィーにより検出している。 さらに、キセノンランプを用いた可視光を、N-Nカップリング二核錯体のジエチルエーテル溶液に照射することによっても変換反応が進行し、目的とするオキソ架橋錯体が生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々が達成した独自のNO還元サイクルにおいて、最も効率の悪いステップを、光を用いることにより大幅に改善することができた。これにより、目的とする触媒反応への展開が容易になるため。
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Strategy for Future Research Activity |
二核ルテニウム錯体を用いたNO還元サイクルを達成し、最も効率の悪いステップであったN2O分子の脱離反応を、光を利用することにより、収率の向上に成功した。今後、NO還元サイクルをもとに、これらの系をモノニトロシル錯体へと展開する。すでに、アジ化ナトリウムを用いることにより、モノアセトニトリル/ニトロシル二核錯体を単離している。予備的であるが、この錯体の還元反応を行ったところ、アセトニトリル配位子が脱離してしまう結果となった。還元反応を起こすためには、アセトニトリル配位子の置換反応により、より強固に結合する配位子に交換する必要がある。まず、この配位子置換反応について調査する。
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Research Products
(2 results)