2011 Fiscal Year Annual Research Report
走査型電子増強ラマン分光顕微鏡の開発と界面化学計測への応用
Project/Area Number |
22685009
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
由井 宏治 東京理科大学, 理学部, 准教授 (20313017)
|
Keywords | 分光 / 走査プロープ顕微鏡 / ラマン散乱 |
Research Abstract |
開発2年目にあたる本年度は、フェムト秒パルスレーザー励起を行うため、フェムト秒パルスレーザーと、走査型顕微鏡の組み合わせを検討した。AFMモードでは、金プローブの場合、可視から近赤外域でのブラズモン共鳴が期待できるため、(1)波長633nmのHe-Neレーザーと、波長680-1080nmの波長可変フェムト秒レーザーとの光学系の組み合わせを検討し、その光学系設計を行った。STMモードでは、カーボンナノチューブ試料での共鳴効果を勘案して波長785nmの半導体固体レーザーで励起し、電気を流すシリコンやグラファイト表面でのラマン散乱を取得した。 一方、電子増強効果の検討に入るため、STMの探針に用いるタングステンを電解研磨した針を作製し、先端に電圧ご印加することで、プラズマの2次電子を発生させ、水中における顕微分光計測を行った。またパルスレーザーの集光による方法でも電子を発生させ、ラマン散乱計測を行った。 全般として、装置系はおおよそ組み上がったので、より制御された電子の導入、すなわち、光誘起電荷移動もしくはトンネル電子の導入による増強効果と、探針によるチップ増強効果を独立に起こし、ラマン散乱の選択律などの違いを検討するため、装置の改良を進めた。具体的な試料としては、細胞系は最初の試験試料としては複雑であるので、AFMモードでは適度な大きさのある脂質ナノチューブを、STMモードでは、探針につけることができラマンモードの研究が進んでいるカーボンナノチューブについて、それぞれのラマンスペクトルの検討に入った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、フェムト秒レーザーとの組み合わせを行うため、近赤外領域で波長可変のチタンサファイアレーザーとの組み合わせの光学系を構築した。こちらは、特に問題なく進展した。ただし、フェムト秒のレーザーは、その短い時間幅からくる波長方向の幅から、ラマンスペクトルのエネルギー分解能がでないため、純粋に共鳴的電子移動を誘起するために使用する必要がある。そのためラマン計測は、同軸に入れた633nmのHe-Neレーザーで行う光学系を設計した。また、信号強度が通常のラマン散乱より1万倍ほど強い共鳴ラマン散乱で、同様の電子増強効果の有無を検証する目的で、カーボンナノチューブの共鳴ラマン散乱計測を意識した、785nm励起の系も設計した。
|
Strategy for Future Research Activity |
チタンサファイアレーザーの繰り返し周波数が76MHzなので、これと同期して強度変調する633nmのラマン信号強度変化を拾うことで、探針先の電子増強効果を定量的に評価していく。このとき、チタンサファイアレーザーの波長を800nm以上に設定することで、633nmのラマン散乱の妨害にならないようにする点がポイントである。一方試料は、近赤外光での電子励起になるので、金属-吸着分子複合系で、近赤外領域に吸収の現われるシステムを検討していく。また、ラマン増強効果をより顕著に検出するため、もともと共鳴ラマンを起こし、トンネル電子のOn,Off時の共鳴ラマン強度の違いを検討することも考えている。この目的のため、カーボンナノチューブ1本をタングステン探針の先端に修飾したSTM探針の作成し、こちらは、STMモードで電圧の印加の周期と同期した共鳴ラマン信号を同期検出することで、トンネル電流(電子)の有無による増強効果を検討していく。
|