2011 Fiscal Year Annual Research Report
アラインを活用した芳香族縮合環骨格構築法の開発と応用
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22685021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 拡人 広島大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40335708)
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Keywords | アライン / 芳香族縮合環骨格 |
Research Abstract |
本年度は,アラインの極めて高い求電子性を反応開発のための機軸とし,特に芳香族縮合型環骨格を構築できる新手法を開拓することを目的とした.中でも特に,イミンやカルボニル化合物などの炭素-ヘテロ元素二重結合種をアラインに対する求核剤として採用し,その付加によって生じる双性イオンを鍵中間体とする反応開発に焦点を絞った.まず,イミンとの反応による新形式の芳香族縮合含窒素複素環構築法の開発に取り組んだ.メシチル基や2,6-ジメトキシフェニル基を有する立体的に嵩高い芳香族アルドイミンをベンザインと作用させると,イミン窒素のベンザインへの求核付加,続く分子内環化を経由する形式的[2+2]環付加により,含窒素四員環が生じる.引き続く開環により発生したアザキシリレンが二分子目のベンザインと速やかに[4+2]環付加を起こし,芳香族縮合含窒素六員環のアクリダンが選択的に得られることを見つけた.従来,アラインとイミンとの反応においては,途中に形成されるアザキシリレンが,窒素上アリール基の2π部分とともに6π電子環状型の閉環を起こすことが知られており,今回開発に成功した型式の反応例は過去に報告がなく,新規性が極めて高い.嵩高い置換基の導入により,アザキシリレン中間体における6π電子環状型閉環に必要な窒素上アリール基の配座が妨げられたことが,二分子目のアラインとの[4+2]環付加を優先的に起こしたと理解できる.本反応は種々のアラインおよびイミンへと適用可能で,多様なアクリダン類の新形式一段階合成法を確立できた. また,ジメチルホルムアミドを用いる含酸素複素環構築法開発にも取り組んだ.アラインとの反応により形成されるオルトキノンメチドの2π成分(ビニルエーテル,アクリル酸エステル等)での捕捉を試みたが,効率的な環形成反応開発は達成できず,現状ではエステルエノラート・ケテンイミンアニオンでの捕捉が必須であることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イミンを求核剤とした,新形式の芳香族縮合型含窒素複素環骨格構築反応の開発に成功しており,当初予定していた研究の目的は概ね達成できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
イミン類とアラインとから形成される双性イオン種が芳香族縮合環形成反応の達成に極めて有効であることが判明したので,今後はこれを鍵中間体とした反応開発を中心に据える予定である.
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