2011 Fiscal Year Annual Research Report
多重クリック反応によるマルチカラー高分子アーキテクチャー
Project/Area Number |
22685023
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
道信 剛志 東京工業大学, グローバルエッジ研究院, テニュア・トラック助教 (80421410)
|
Keywords | 高分子合成 / 合成化学 / クリックケミストリー / 色彩化学 |
Research Abstract |
クリックケミストリーに分類される反応は、温和な条件下で定量的に進行する付加反応である。現在知られているクリックケミストリー反応は、銅触媒存在下でのアルキンとアジドの付加環化反応やチオールとアルケンの付加反応等に限られており、新たな結合部位が発色団とは成りえない。本研究では、ドナーアクセプター型色素を生成するアルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応に着目し、様々な色素構造を高収率で高分子に導入する方法を確立する。 アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応を用いてポリウレタン誘導体の側鎖にドナーアクセプター部位を構築した。アクセプター分子としてテトラシアノエチレン(TCNE)を用いた場合には赤色、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)を用いた場合には緑色のポリマーが得られた。また、側鎖アクセプター部位のシアノ基が銀イオンに多価配位することで、電荷移動吸収バンドの長波長シフトが起こることを見出した。すなわち、銀イオンを添加することでTCNE付加体は赤色から桃色へ、TCNQ付加体は緑色から黄緑色へと変化した。さらに、前駆体高分子をITO電極上に塗布した後、電気化学的に酸化すると青色へと変化した。この青色ポリマーは不活性雰囲気下では失活せず、高い化学的安定性を有していた。 以上より、アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応、高分子錯体の形成、エレクトロクロミズムを組合せることで、一つの前駆体高分子からほとんどの色彩を創り出せることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応を軸として様々な色彩を創り出すことを目的としている。当初は様々な構造のアクセプター分子を試験して多色を得る計画であったが、現行のドナーアクセプター部位が金属イオンと錯形成することで色を調節できることを見出した。すなわち、より簡便に目的を達成できたことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
アルキンとアクセプター分子のクリックケミストリー反応は、アルキンとアジドの付加環化反応と組合せて使用することができる。一方、他のクリックケミストリー反応との併用可能性については未開拓である。今後は、チオールとアルケンの付加反応やDiels-Alder反応との組合せを試験して、より複雑な巨大分子に色素構造を導入する手法を確立する。
|