2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒の分解能を有する走査プローブ顕微鏡の開発およびその応用
Project/Area Number |
22686005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
武内 修 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20361321)
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Keywords | 超精密計測 / ナノ材料 / 1分子計測(SMD) / 表面・界面物性 / 光物性 |
Research Abstract |
年度初頭は震災による実験設備の不具合からの復旧が主な仕事となった。その後、前年度に導入したレーザー装置や、それと共に用いる光学回路の設計・立ち上げを行うと共に、従来方式の時間会解走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて適用可能試料の拡大・データ解析手法の確立に関する研究を行った。 これまでパルスペア励起STMによる研究対象は主にn型半導体であったが,新たにp型半導体に適用した際のデータ解析手法を確立した。探針による光キャリアの引き抜きの効果が大きく現れることがn型との大きな違いであったが条件を選ぶことでキャリアダイナミクスを測定可能であることが示された。また、ペアにする2つのパルスの強度を互いに異なる物とした場合のデータ解釈についても大きな進展があった。特に光強度の強い条件で、パルスピッカー部でブロックしたパルスの漏れ光が大きな影響を及ぼすため、その影響を考慮する必要があった。サブピコ秒領域よりもさらに短い時間領域で有効な新たな手法を開発した。そのような時間領域では2つのパルスが重なることにより、干渉効果で実効的な光強度が変化してSTM測定を不可能にしてしまう問題があった。新手法ではポンプパルスとプローブパルスの位相をポッケルスセルにより精密かつ高速に変調することにより、干渉の影響を大幅に軽減することが可能である。上記については、学会および一部を論文として発表した。 新たに導入したレーザー装置にチャープ補償を組み合わせることで30fsのパルス発生を確認した。パルスピッキングを使わず、光路を切り替えることで遅延時間を変調する新たな手法について、GaAsの反射率分光および時間分解STM測定を試みた。どちらについても遅延時間変調動作が確認でき、また反射率分光については十分な測定精度が得られた。時間分解STM測定についてはレーザー強度の揺らぎが問題となっており、光学系の最適化を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響により装置の立ち上げが遅れたことが原因で、パルスピッキングを用いない時間分解STM装置の立ち上げにはやや遅れが生じたが、その代わりとして、装置立ち上げ後に問題となるであろうパルス干渉の悪影響を軽減する手法を先行して開発できている。
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Strategy for Future Research Activity |
パルスピッキングを用いない時間分解STM装置について、現状では光路の機械的振動による光強度揺らぎが問題となっている。原因となっているのはポッケルスセル通過時のチャープを補償する光学回路が長大になってしまっている点であり、この部分の機械的強度を上げることにより測定精度の向上を目指す。 平行して、この問題を抜本的に改善できる可能性についても検討を続ける。具体的には光路切り替えをポッケルスセルを用いずに行う方法、あるいは、遅延時間変調方式の見直し等を考えている。 また、同手法の適用可能試料の拡大に向けた研究も継続する。
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Research Products
(15 results)