2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22686021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新宅 博文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80448050)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 界面動電現象 / ナノ制限空間 / 生体高分子 / 一分子計測 / マイクロ・ナノ流体 / 可視化 / MEMS |
Research Abstract |
本研究課題で開発した可視化技術を応用して,ナノ・マイクロ電気穿孔法における分子輸送の可視化を試みた.ナノ・マイクロ電気穿孔法とは,細胞よりも小さなオリフィスを利用して細胞の電気穿孔を行うものである.オリフィスに細胞を固定し,電位差を与えると,オリフィスに固定された部分の細胞膜の膜電位を選択的に上昇させることが出来る.またオリフィス周辺に生じる集中電場が電気泳動を誘導し,細胞内部に分子を効率良く導入できる可能性が示唆されている.しかしながら,実用上重要であるプラスミド等は一般に細胞膜に形成される孔よりも大きな慣性半径を有しており,従来法であるバルク電気穿孔法においては分子が電気泳動で導入されないことが報告されている.そこで,蛍光分子(約2 nm),量子ドット(約15 nm)およびプラスミド(約100 nm)の3種類を利用してナノ・マイクロ電気穿孔法における分子輸送の詳細について検討した.量子ドットを用いた実験において電場印可直後に核内部に量子ドットが観察された.本結果は量子ドットが電気泳動により導入された可能性を示唆している.細胞核に存在する核膜孔の大きさは10 nm以下であると考えられることから,本結果は外部電場が核膜の分子透過性に対して影響を及ぼした可能性を示唆している.すなわち,本結果はオリフィスの形成する集中電場が細胞膜のみならず核膜の分子透過性を上昇させる可能性を示唆している.今後も実験を継続し現象の詳細な解明を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発した可視化技術を細胞のナノ・マイクロ電気穿孔法へ応用した.昨年度までに開発した2色蛍光同時計測システムを適用することで,電気穿孔における分子の流入と流出の両者について検討を行った.開発した可視化技術をナノ・マイクロ電気穿孔法に対してそのまま適用できたため,現在までの所,順調に実験データの収集を行えている.また微小電流計測に基づく局所電場計測法の開発を行った.本計測についても昨年度までに構築した高精度の電流計測と等価回路モデルに基づく解析を適用し,微小孔に生じる電場の計測に成功している.本計測法の特徴は1 msの時間スケールにおいて生じる電場計測を可能にする点にあり,ナノ・マイクロ電気穿孔法における電場計測を通してその有効性を示した.これらの成果は英文ジャーナルに掲載されており,既に高い評価を得ている.以上からおおむね計画通りに進んでいると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度において構築した2波長蛍光観察および微小電流計測を可能にする実験系を継続的に利用して,データの収集を継続的に行う.今年度は特にプラスミド等実用上重要な生体高分子を用いた実験を集中的に行い,電気穿孔時に生じるプラスミドの電気泳動が細胞内部への分子輸送に及ぼす影響について詳細に解析する.特にオリフィスにより生じる集中電場について着目した検討を行い,集中電場が細胞膜および核膜の分子透過性に及ぼす影響やプラスミドの流動様式に及ぼす影響等を明らかにし,これらの現象と遺伝子発現効率との関係について解析する. 現在,電気穿孔を行った後の細胞の生存率が低く,最終的な遺伝子発現の効率が低いという課題に直面しているが,原因を明らかにするべく,一つ一つ対照実験を行い解決に向けて着実に研究を進めている.さらに,ナノ・マイクロ電気穿孔法を用いて細胞内物質の抽出を行う研究にも着手しており,予備実験からは成果の期待できる結果が出始めている.
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Research Products
(5 results)