Research Abstract |
本研究では,自己言及性と双方向性を組み込んだ触覚センシング技術の構築を目的としている.自身の指をセンサ素子として利用し対象と皮膚の間で生じた振動を取得・評価するセンサの開発,およびその応用について検討している.昨年度までに,複数のマイクロフォンを用いた指装着型センサを試作し,平面および曲面上の粗さ評価への有効性,およびセンサ出力に含まれる個人差の確認や触覚情報の共有の可能性について検討した.本年度は.上記の複数のマイクロフォンを用いたセンサに関する触動作の影響検討と皮膚振動を正確に計測する新たなセンサの試作,人の触知覚における双方向性に関する基礎的実験を行った. 本開発のセンサは使用者の触動作の影響を受ける.そこで,複数人の被験者に対して,押しつけ力となぞり速度を一定に保つよう指示した上で,触動作に応じてセンサ出力がどのように変化するか調べた.その結果,押しつけ力の増加に応じて,センサ出力が増加する傾向は見られたが,速度に応じては,一定の変化は見られなかった.また,加速度センサを2つ用いて,正確に皮膚振動を計測する指装着型センサを新たに開発した.指に貼りつけた加速度センサで皮膚振動と指の動きを計測し,指輪に固定された加速度センサで指の動きを計測し,両者の差分値から皮膚振動を計測する.皮膚振動を正確に捉えられることから,人への機械刺激の入力を扱う上では,マイクロフォンより有利といえる.また,人の触知覚における双方向性を検討するため,粗さの弁別実験を行い,同時に人の触動作を計測することで,粗さの程度および評価方法(絶対評価,相対評価)によって,触動作がどのように変化するか調べた.その結果,粗さの程度によって,使用する押しつけ力の大きさの変化幅を変えること,評価方法によって,なぞり速度を変えることが明らかになった..
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサの試作や改良およびセンサ出力と人の触動作との関係について検討も進んでおり,また,心理物理学的アプローチも取り入れ,人の双方向性に関わる触知覚特性についても理解が進みつつあり,当初の計画の通り,良好に研究が進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,マイクロフォンを用いたセンサ以外に,より正確に皮膚振動を捉えるため,加速度センサを用いた指装着型センサも開発した.また,複数のセンサ出力から,信号の重心を求めたり,触動作がセンサ出力に与える影響を調べ,さらに,粗さ知覚における双方向性の寄与を検討するための基礎的実験を行った.今後もこれらを継続し,加えて,皮膚の力学特性の影響や個人差も考慮し,自己言及性および双方向性の視点から人の触知覚特性について理解を深める.また,センサの改良およびリアルタイムの信号処理について検討し,開発したセンサを用いた具体的応用として,粗さ評価および触感覚の共有について検討する.
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