2011 Fiscal Year Annual Research Report
衛星及びXバンドMPレーダによる観測情報を用いた統合的データ同化手法の開発
Project/Area Number |
22686045
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
谷口 健司 金沢大学, 環境デザイン学系, 特任助教 (20422321)
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Keywords | 降水予測 / 衛星観測 / データ同化 / 雲微物理 / レーダ観測 |
Research Abstract |
本研究では,衛星観測データを活用した雲微物理データ同化手法の高度化と,XバンドMPレーダによる観測情報を用いたデータ同化手法の開発に取り組む. 平成23年度においては,雲微物理衛星データ同化手法及びその結果を用いた降水予測における雲底高度情報の感度実験と,シーロメータによって観測された実際の雲底高度情報を与えたデータ同化及び降水予測実験に取り組んだ.従来の雲微物理衛星データ同化手法では1500mとしていた雲底高度に加えて,1000m,2000m,2500mと変化させて,複数の降水イベントに対して同化を行い,衛星観測及び同化後の輝度温度を比較した結果,垂直偏波よりも水平偏波において顕著な影響がみられた.また,雲が比較的薄い領域において,雲底高度を変化させる影響が大きかった.また,同化結果を用いた降水予測実験においても,予測降水量に顕著な違いがみられた.ただし,例えば雲層が厚くなるように雲底高度を変化させた場合であっても,降水イベントによって降水量の増減の傾向が異なるなど,複雑な挙動を示した.これらは,適切な雲底高度情報を与えることによる同化結果及び降水量予測の改善の可能性を示唆するものである. シーロメータによる観測結果を与えた同化実験では,観測された雲底高度が,従来与えていた雲底高度の値(1500m)と近く,同化結果及び予測降水量に目立った変化はみられなかった.また,領域気象モデルにおける鉛直分解能より小さな雲底高度の差では,同化結果に何ら影響を与えないとの知見を得た.これは,何らかの方法で雲底高度の水平分布情報が得られた場合に,それを十分に活用するためには,観測結果が適切に反映されるようモデル内の鉛直分解能を細かくする必要があることを示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星観測データを用いた雲微物理データ同化手法の高度化については,各年度の計画に沿って進めており,目標とした高度化手法の実装や新たな知見の獲得ができている.XバンドMPレーダによる観測データを用いたデータ同化については,当初の計画より同化のための前処理の検討に時間を要している状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
衛星データを用いた同化手法の高度化については当初計画していた部分をほぼ達成することができた.H24年度においてはXバンドMPレーダの同化に重点的に取り組むことによって,両者を統合化したデータ同化システムの構築を目指す.また,H23年度において雲底高度情報の重要性が確認されたことから,衛星搭載マイクロ波放射計による観測データから雲底高度の空間分布を推定するための基礎研究として,地上設置型マイクロ波放射計を用いた基礎研究を開始する.
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