Research Abstract |
本研究では,海岸構造物からの飛来塩分は,暴風暴浪時に構造物で激しく打ち上がった飛沫が強風によって細粒化し,海塩粒子となって陸域に輸送されるというプロセスで生じるものと仮定し,飛沫の打上げ規模(打上げ高,水量など)と風速を変数とした海岸構造物における海塩粒子生成モデルを構築することを目的としている.これを実現するため,平成23年度は,前年度に引き続き断面2次元造波風洞水路を用いた飛沫の打上げ規模に関する可視化実験,および,現地での暴風暴浪時における海岸構造物からの飛来塩分量等の観測を実施した. 可視化実験では,前年度の知見をもとに,護岸で生じる打上げ等の激しい現象を詳細に把握するため,トレーサーについて検討し,本実験では一般的に利用されている蛍光トレーサーに比べて,人工海水で作成したマイクロバブルが有効であることが分かった.マイクロバブルは形状がほぼ球で浮上速度が遅く,また,合一しないなどの特徴があり本実験において非常に都合が良い.実験においては,まず,人工海水のマイクロバブルが打上げや越波にほとんど影響しないことを確認し,次いで,波と風の条件を組み合わせた実験を行って,打上げ規模(打上げ高,打上げ水量,越波量など)の発生頻度を調べた. 現地観測では,波浪(波高・周期・波向),潮位,風向風速,海岸構造物(護岸)での飛沫の打上げ高,飛来塩分量,飛沫粒径(陸域に飛来するもの)について観測を行った.場所は建設中の人工島で,建物等の遮蔽物がほとんど無いことから,基礎的な検討に適した貴重なデータが得られた.得られたデータをもとに,現地での風等の条件に応じた飛来塩会の拡散状況を把握した.また,これらのデータは室内実験で調べている打上げ規模の発生頻度等との対応や,最終的に構築する海岸構造物における海塩粒子生成モデルの検証のために利用される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は計画に沿って水理模型実験と現地観測を実施した.実験と観測のそれぞれで適切なデータを取得するための工夫や検討を加え,当初から想定していた貴重な知見が得られている.ただし,気象条件等の原因で観測を行った時期が年度末となってしまったため,縮尺模型実験によるデータと現地観測データの比較に基づく縮尺効果に関する検討が若干遅れており,その点を踏まえ自己評価を「(3)やや遅れている」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,室内での水理模型実験と現地での観測によって様々な検討に必要な数多くのデータを得ることが極めて重要と考えており,これまでの研究の過程において,本研究で必要な可視化等の模型実験手法や観測技術を確立することができ,データの蓄積が順調に進んでいる.最終年度は,更なるデータの蓄積に加え,得られたデータをもとに研究計画に沿った検討を行なって,当初の目的を達成するべく研究を進める.また,最終年度には,これまでに得られた知見を整理しつつ,逐次,学会発表等により成果を発表する.
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