Research Abstract |
本研究では,高い空間分解能と時間分解能の両方を有する原子・電子構造解析法を開発し,先進材料研究に利用することで機能発現と原子・電子構造との相関性を明らかにすることを目的としている.具体的には,透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いて計測される電子線エネルギー損失分光スペクトル(EELS)を時間分解能で計測する新手法を開発する.また,高速第一原理スペクトル計算法を用いることにより,実験スペクトルを精緻に解析し,原子構造および電子構造の時間変化を明らかにする. 平成22年度においては(1)時間分解能EELSシステムの開発,(2)スペクトル解釈のための理論計算法の確立,(3)先進材料の構造決定,に関する取り組みを行った.まず(1)EELSシステムに関して,電子線の走査を精密に行う装置及び,二次元EELS用CCDを導入した.これにより,電子ビーム制御の位置精度が向上し,最大1024個のEELSスペクトルを連続的に取得することが可能になった. (2)理論計算法に関して,一電子及び多電子計算法を用いることによりほぼすべてのEELSスペクトルを計算可能であることを実証した.また,申請研究者らが開発した新EELS計算法を系統的に行い,格子不整合領域におけるEELSスペクトルを高精度かつ高速に計算できることを明らかにした. (3)CeO_2やSrTiO_3などの先進材料に関して,その格子不整合領域の構造解析を行った.その結果,界面における酸素空孔の役割や,欠陥形成挙動,及びその拡散挙動を明らかにすることができた.この結果から,時間分解能計測における温度条件と雰囲気,拡散種と欠陥種に関する知見を得た. 以上の研究結果により,本申請研究が目指す高い空間分解能と時間分解能を有するEELS解析法を開発するためのベースが固まったといえる.今後はこれら実験・計算手法をさらに高度化し,実際の機能材料に適用していく.
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