2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子の生体影響に関する単一粒子・単一細胞レベルの基礎的研究
Project/Area Number |
22686072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新戸 浩幸 京都大学, 工学研究科, 講師 (80324656)
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Keywords | ナノ粒子 / 動物細胞 / 細胞毒性 / 表面官能基 / 付着 / 飲食作用 / 電子顕微鏡 / 光学顕微鏡 |
Research Abstract |
工業製品や化粧品などに利用されているナノ粒子の生体影響(ナノリスク)が、社会的に問題視されつつある。本研究では、無機酸化物ナノ粒子と培養細胞を用いて単一粒子・単一細胞レベルの基礎的かつ系統的な実験を行い、ナノ粒子の「サイズ、表面特性」が「細胞への付着・脱着、摂取・排出、毒性」にどのように影響するかを、コロイド科学と細胞生物学の双方の視点から明確にすることを目的とする。さらに、ナノ粒子の細胞影響因子を決定し、そのメカニズムの全体像を明らかにする。このようなナノ粒子の適正な評価により、ナノリスク問題に一石を投じ、産業と社会に貢献する。 無機酸化物ナノ粒子のモデル粒子として、種々の表面官能基が付けられたシリカ粒子を用いた。これらのナノ粒子について、粒子径分布を動的光散乱(DLS)と透過型電子顕微鏡(TEM)により、表面電位をゼータ電位測定装置により、それぞれ評価した。これらのナノ粒子を種々の条件下で4種類の動物細胞(B16F10、SK-MEL-28、A549、TIG-3)に暴露し、細胞の生存性、毒性、形態変化などを、マイクロプレートリーダー、各種光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡(SEM)を駆使して評価した。その結果、(1)ナノ粒子による細胞影響の因子は、粒子の暴露濃度・暴露時間の他に、粒子の物理・化学的性質(粒子径、粒子表面の化学的性質)、暴露温度、培地中血清濃度であること、(2)これら因子のバランスがナノ粒子の細胞影響を決定すること、などを定量的に明らかにした。特に、表面が無修飾のシリカ粒子では、暴露粒子濃度0.02%を境に10~30分という短時間で多くの細胞が死滅したことは、注目に値する。このようなシリカ粒子の高い細胞毒性の原因として、粒子が細胞膜の外側に強固に付着することによって、細胞の代謝が妨げられたり、膜タンパク質の機能が阻害されたりするためと推察している。
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