2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ粒子の生体影響に関する単一粒子・単一細胞レベルの基礎的研究
Project/Area Number |
22686072
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新戸 浩幸 京都大学, 工学研究科, 講師 (80324656)
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Keywords | ナノ粒子 / 表面官能基 / 接着性動物細胞 / 浮遊性動物細胞 / 赤血球 / 膜損傷 / 付着 / 飲食作用 |
Research Abstract |
工業製品や化粧品などに利用されているナノ粒子の生体影響(ナノリスク)が、社会的に問題視されつつある。本研究では、無機酸化物ナノ粒子と培養細胞を用いて単一粒子・単一細胞レベルの基礎的かつ系統的な実験を行い、ナノ粒子の「サイズ、表面特性」が「細胞への付着・脱着、摂取・排出、毒性」にどのように影響するかを、コロイド科学と細胞生物学の双方の視点から明確にすることを目的とする。さらに、ナノ粒子の細胞影響因子を決定し、そのメカニズムの全体像を明らかにする。このようなナノ粒子の適正な評価により、ナノリスク問題に一石を投じ、産業と社会に貢献する。 無機酸化物ナノ粒子のモデル粒子として、現在産業的に大量に使用されているシリカ粒子を用いた。接着性動物細胞(B16F10)、浮遊性動物細胞(Jurkat)、赤血球に対して、様々な条件のもとでシリカ粒子を曝露し、シリカ粒子が細胞膜の損傷に与える影響について検討した。その結果、以下の3点が明らかとなった. 1)細胞種に依らず、シリカ粒子由来の細胞膜損傷性は、粒子の総表面積が大きいほど高くなった。この結果から、膜損傷性はシラノール基数に依存すると考えられる。 2)細胞腫に依らず、膜損傷性は、曝露温度(4~37℃)が高いほど高くなった。この結果から、膜損傷性は膜流動性に依存していると考えられる。 3)細胞腫に依らず、粒子が懸濁されている培養溶液への血清の添加により、膜損傷性が低くなった。様々な血清濃度における粒子の流体力学的直径など測定結果から、血清による膜損傷性の低減は、血清が粒子を被覆することで細胞との相互作用を低減することに由来すると考えられる。 以上の結果により、シリカ粒子由来の膜損傷性は粒子表面と細胞膜表面による相互作用によって発現している可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ粒子の曝露対象となる細胞として、接着性動物細胞、浮遊性動物細胞、赤血球という由来・素性の極めて異なる細胞を用いても、シリカ粒子由来の細胞膜損傷性には普遍性があることを定量的に示すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果によれば、シリカ粒子の表面修飾基の有無は、表面修飾基の種類よりも、細胞応答を劇的かつ短時間で変化させる。この短時間の細胞応答とは、無修飾シリカ粒子による膜損傷である。シリカ粒子が表面修飾基をもつ場合、シリカ粒子は細胞内に取り込まれ、長時間経過しないと毒性などの細胞応答は見られない。今後の研究では、無修飾シリカ粒子による膜損傷に焦点を絞り、シリカ粒子暴露後の単一細胞・単一粒子レベルのタイムラプス観察を主に行う予定で或る。これにより、シリカ粒子由来の細胞膜損傷性について、そのメカニズムの詳細を明らかにしたい。
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